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この記事の結論
- スイス株はPER中央値が25.97倍と7か国で最も高く、配当の年平均増加率は5.0%と最も低いという実測結果です
- この2つは同じことの裏表という読み方ができます。スイスに多い医薬・ヘルスケアと資本財・機械は、利益を配当より研究開発や投資に回しやすい業種だからです
- 一方で、10万円あたりの片道手数料負担率は1.09%と7取引所で最も高く、配当課税も現地源泉35%と欧州で最も重いという結果も出ています
- 「良い会社が多い」ことと「持ちやすい」ことは別、というのがこの記事の見方です
当サイトでは国別のPERを実測した記事で、7か国のうちスイスのPER中央値が25.97倍と最も高いこと、その理由が医薬・ヘルスケアや資本財・機械という業種構成にありそうだということを書きました。ただ、あの記事は7か国を横並びにした記事で、スイス1国を掘り下げたものではありません。
そこで今回は、当サイトがこれまで実測してきたデータの中からスイスに関する数字だけを集め直しました。PERだけでなく、配当の増え方、手数料、税金まで並べると、スイス株には「高い」というだけでは片づけられない性格が見えてきます。
数字で見るスイス株——PER25.97倍、増配率5.0%という位置づけ
まず、当サイトが2026年9月2〜3日に実測した指標を、7か国での位置づけとあわせて並べます。
| 指標 | スイス | 7か国での位置 |
|---|---|---|
| PER中央値 | 25.97倍 | 最も高い(最も低いイタリアは15.01倍) |
| 配当の年平均増加率 | 5.0% | 最も低い(最も高いスペインは15.4%) |
| 浮動株比率 | 90.8% | 2番目に高い(最も高いイギリスは97.6%) |
| 権利落ちが最も多い月 | 4月(17社) | ドイツ・フランス・イタリアの5月とはずれる |
| 決算が最も多い月 | 8月(12社) | ドイツ・デンマークと同じ |
PERが最も高く、配当の増え方が最も遅い。この2つが同じ国に同時に出ているのが、スイス株の実測結果です。浮動株比率が2番目に高い点は、市場で流通している株式の割合が大きいという意味では取引のしやすさにつながる面ですが、権利落ちが4月に集中している点は、独仏伊の5月と月がずれるという程度の違いで、優劣を語るような話ではないと思います。
「高い」と「増えない」はセット——医薬と資本財に理由がありそうです
スイスに多い業種を見ると、医薬・ヘルスケアが3社、保険が3社、資本財・機械が2社という構成です。業種別に実測した別記事によると、医薬・ヘルスケアと資本財・機械は、8業種の中でPERが最も高い部類に入ります(医薬23.58倍・資本財25.24倍)。スイスのPERが高いのは、この2業種が多いからだと説明がつく部分があると思います。
そして同じ実測では、医薬・ヘルスケアの配当性向は44%、資本財・機械は49%と、他業種に比べて低めです。配当性向が低いというのは、稼いだ利益のうち配当に回す割合が小さいということです。裏を返せば、利益を配当ではなく研究開発や設備投資に回しやすい業種だとも言えます。医薬品の開発や精密機械の研究には長い時間とお金がかかりますから、配当を急いで増やすより、稼いだ分を次の開発に回すという判断は自然なことだと思います。
ただし、これはあくまで業種構成という角度から見た場合の説明であり、スイス企業のPERが高い理由がこれだけで説明しきれるわけではありません。個別企業の戦略や市場の期待もそれぞれ違いますし、業種構成が唯一の原因だと断定できるものではないと考えています。
もう一つ、別の角度から見た数字もあります。配当性向80〜100%の欧州株を集めた記事では、15社のうち4社がスイス企業でした(アクセレロン、EMSケミー、キューネ・アンド・ナーゲル、ズルツァー)。稼いだ利益のほとんどを配当に回している会社が、増配率の低い国の中にも一定数あるということです。増やさない代わりに、高い水準を維持しているという別の側面もあると思います。
スイス株を持つコスト——手数料も配当課税も7か国で最も重い
「良い会社が多い」という話とは別に、持つ側のコストも見ておく必要があると思います。取引所別の手数料を実測した記事によると、10万円あたりの片道手数料負担率はスイスが1.09%と、当サイトが調べた7取引所の中で最も高い結果でした。
税金の面ではさらに差が開きます。配当税を国別に比較した記事のとおり、スイスの配当課税は現地源泉35%で、日本との租税条約による軽減後も約25%が戻ってこないという、欧州の中でも最も重い水準です。
この2つを合わせて試算したのがコストを1年で試算した記事です。10万円分を利回り3%で1年間保有した場合、手数料と税金を合わせたコストはスイスが3.63%という結果でした。同じ条件のフランスは1.67%ですから、スイス株は同じ利回りの株を持っていても、手取りで見ると差が出やすいということになります。
なお、この配当課税の仕組みは一般的な制度の説明であり、実際に還付を受けられるかどうかや申告の要否は、口座の種類や個人の状況によって変わります。個別の申告については、税理士や税務署にご確認いただくようお願いいたします。
それでも配当を出し続ける会社が多いのも事実です
増配率が低いからといって、配当そのものが不安定というわけではなさそうです。無配の欧州株を数えた記事によると、無配だった17社のうちスイス企業は0社でした。9社が無配だったデンマークとは対照的な結果です。
一方で、減配していた欧州株を数えた記事では、減配していた39社のうちスイス企業は6社あり、これはドイツの10社・イギリスの8社に次いで3番目に多い数字でした(アデコがマイナス26%など)。無配ゼロという安定した面がある一方、減配自体がまったくないわけではないという、両方の側面があると思います。
個別に目立つ高PER銘柄——スウォッチの1,054倍は比較に使えません
PER30倍超の欧州株を集めた記事では、42社のうちスイス企業が複数含まれていました。VATグループが84倍、ベリモが49倍といった水準です。半導体製造装置や精密機器といった、成長期待が織り込まれやすい分野の企業が目立ちます。
なお、スウォッチは実績PERが1,054倍とほかの銘柄とは桁が違い、指標として比較に使えるものではありません。理由まで推測するのは難しいため、この記事では数字を並べるだけにとどめます。
まとめ:高い理由と、持つコストは別々に見る
- スイス株はPER中央値25.97倍で7か国最高、配当の年平均増加率5.0%で7か国最低
- 医薬・ヘルスケアと資本財・機械が多いという業種構成で、ある程度は説明がつくと思います(唯一の原因とは言い切れません)
- 手数料は10万円あたり1.09%、配当課税は現地源泉35%で、いずれも今回調べた7か国の中で最も重い水準です
- 無配企業は0社という安定した面もある一方、減配企業は6社と3番目に多いという実測もあります
スイス株は「良い会社が多いから持ちたい」と思わせる市場ですが、数字を見ると持つコストは高い部類です。それでも持つかどうかは、何を期待するか次第だと思います。配当の増え方より企業そのものの安定性や成長性を重視するのであれば、この結果はそれほど気にならないかもしれません。
この記事の検証方法
- 本記事のPER・増配率・浮動株比率・権利落ち月・決算月は、当サイトが2026年9月2〜3日に実測したものです
- 業種別のPER・配当性向(医薬・ヘルスケア、資本財・機械)は業種別に実測した別記事の集計によるもので、この記事単独の集計ではありません
- 配当性向80〜100%の実測は別記事、無配の実測は別記事、減配の実測は別記事、PER30倍超の実測は別記事の集計を、それぞれこの記事のためにスイス分だけ抜き出したものです
- 手数料の実測は別記事、配当課税は別記事、両者を合わせた試算は別記事の集計によるものです
- スウォッチは実績PERが1,054倍と他社と桁が違い、指標として比較できないため本文中の表からは外しています
- この記事の数値は当サイトが取り上げた銘柄に限った集計であり、スイス市場全体を代表するものではありません
- 配当課税に関する記載は一般的な制度の説明であり、個別の申告については税理士や税務署にご確認ください
- 筆者はポルトガル在住で、インタラクティブ・ブローカーズ(IBKR)の口座から欧州株ETFを中心に保有しています(本記事に登場する銘柄を保有しているとは限りません)
この記事を書いた人:Kawa
ヨーロッパ在住30代・サイドFIRE中の兼業投資家。日本の証券会社では買えない欧州株を、現地から実際の数字で解説しています。詳しいプロフィール
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免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。記載のPER・配当利回り・税率等の数値は当サイトが実測または公表資料をもとに算出した時点のものであり、市場や制度の変化により変更される場合があります。特定の銘柄が割安・割高であることを示すものではなく、税務・投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。当サイトは本記事の情報に基づく損失について一切の責任を負いません。

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