※この記事の数字は、2026年9月に集計の誤りを直したうえで取り直したものです。経緯は末尾の「この記事の検証方法」に書いています。
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この記事の結論
- 2026年9月2日、266銘柄のPER・配当利回り・配当性向を業種別に集計し直しました。最も利回りが高い保険は4.58%、最も低い医薬・ヘルスケアは1.71%で、約2.7倍の差があります
- ただし保険4.58%と2位の銀行4.33%の差はわずかです。順位そのものより、金融の2業種が上位に来るという傾向で読んだほうがよいと考えています
- 利回りが高い業種はPERが低く、利回りが低い業種はPERが高い傾向がはっきり出ています。上位6業種はすべてPER18倍未満、下位2業種は23倍以上です
- 配当性向を見ると理由が分かります。医薬・ヘルスケアの配当性向は44%で、稼いでいないのではなく、配らずに研究開発へ回していると読めます
以前、欧州株のPERを同じ日に全部調べた記事で、当サイトが取り上げている欧州株のPERと配当利回りを国別に集計しました。あの記事は国という切り口でしたが、今回は業種という切り口で見てみます。同じ配当利回りでも、業種によってどれくらい違うのか、これまで見せていませんでした。
結論から言うと、業種によって配当利回りは2.7倍近く違います。そして、その差はPERや配当性向、さらには国の偏りともつながっています。今回、2026年9月2日に、266銘柄のPER・配当利回り・配当性向を同じ日に一斉取得し、業種別に中央値を計算しました。
8業種を並べると、保険4.58%から医薬・ヘルスケア1.71%まで
業種名は取得元の分類をそのまま使わず、当サイトでまとめ直しています。4社以上ある業種だけを対象にし、配当利回り・PER・配当性向はいずれも中央値を使いました。1社の極端な数字に引っ張られる平均より、業種の実態に近いと考えたためです。結果は次のとおりです。
| 業種 | 社数 | 配当利回り | PER | 配当性向 | 国の内訳 |
|---|---|---|---|---|---|
| 保険 | 15 | 4.58% | 14.73倍 | 56% | 独4 瑞3 西2 英2 伊2 丁1 仏1 |
| 銀行 | 18 | 4.33% | 13.42倍 | 50% | 伊7 西3 瑞3 丁2 仏2 独1 |
| 公益 | 22 | 4.07% | 16.57倍 | 56% | 伊6 英5 西5 丁2 仏2 独2 |
| 自動車・部品 | 13 | 3.98% | 12.93倍 | 53% | 独6 仏3 伊2 西2 |
| 食品・飲料 | 8 | 3.91% | 18.06倍 | 48% | 丁2 西2 仏2 瑞1 伊1 |
| 小売・外食 | 13 | 3.61% | 17.62倍 | 52% | 英8 丁1 独1 伊1 仏1 西1 |
| 資本財・機械 | 15 | 1.80% | 25.24倍 | 49% | 独5 仏3 英2 瑞2 西1 丁1 伊1 |
| 医薬・ヘルスケア | 16 | 1.71% | 23.58倍 | 44% | 独6 丁3 瑞3 伊2 西1 仏1 |
最も高い保険の4.58%と、最も低い医薬・ヘルスケアの1.71%を比べると、約2.7倍の開きがあります。同じ「欧州株の配当利回り」という言葉でも、どの業種を見ているかで印象がまったく変わってくると思います。
ここで一つ、正直に書いておきたいことがあります。表の1位である保険4.58%と、2位の銀行4.33%の差は、0.25ポイントとかなり小さいものです。実は当サイトが8月30日に取った別の日のデータでは、この2つの順位が逆転していました。つまり「保険と銀行のどちらが1位か」は、取得した日によって入れ替わる程度の差だということです。この記事で読み取ってほしいのは「保険が1位である」という順位そのものよりも、「金融にあたる2つの業種がそろって上位に来る」という傾向のほうです。保険が1位であることを、あまり強調しすぎないようにしたいと思います。
保険と銀行が上位に来るのは、どちらも保険料や預金を先に受け取り、支払いは後から発生する商売で、工場や設備への大きな投資、あるいは研究開発費が要らないためだと考えられます。だからこそ、稼いだ分を配当に回しやすい構造なのだと思います。
利回りが高い業種はPERが低い——上位6業種はPER18倍未満
表をよく見ると、配当利回りとPERがほぼきれいに逆に動いていることに気づきます。利回り上位6業種(保険・銀行・公益・自動車部品・食品飲料・小売外食)はすべてPER18倍未満で、利回り下位2業種(資本財機械・医薬ヘルスケア)はどちらもPER23倍以上です。
これは、「配当をもらう業種」と「値上がりを期待される業種」に分かれているという読み方ができると思います。銀行や保険のように利益成長への期待が相対的に控えめな業種は、株価は割安に評価される代わりに配当を厚めに出す。資本財・機械や医薬・ヘルスケアのように将来の成長が期待される業種は、株価にその期待がすでに織り込まれる分、配当利回りは低く出る。どちらが優れているという話ではなく、業種ごとに株主還元の形が違うだけだと思います。
もう一つ気づくのが、自動車・部品のPER中央値12.93倍が、8業種の中で最も低いという点です。これは自動車株が割安に評価されているというより、業績の振れが大きい業種だからだと考えたほうが自然です。利益がたまたま良い時期に当たると、PERは低く出やすくなります。
配当性向を見ると、医薬・ヘルスケアが低利回りの理由が分かる
PERだけでは「なぜ低いのか」まではっきりしません。そこで配当性向(稼いだ利益のうち、どれだけを配当に回しているか)を並べると、景色が変わります。保険56%・公益56%は、利益の半分以上を配当に回しています。一方、医薬・ヘルスケアの配当性向は44%です。
ここから言えるのは、医薬・ヘルスケアの利回りが低いのは、稼いでいないからではなく、配らずに研究開発へ回しているからだということです。新薬の開発には長い年月と大きな資金がかかります。稼いだ利益を配当として出す代わりに、次の成長のために使っている業種だと読めます。ただし、医薬・ヘルスケアの中にも配当性向にはばらつきがあります。中央値だけを見て業種全体がそうだと決めつけて個別銘柄に飛びつくのは避けたほうがよいと思います。
業種の偏りは、国の偏りでもある
もう一つ、この集計で見えてきたのが業種と国の結びつきです。銀行と公益はイタリアが最多で、それぞれ7社・6社を占めています。銀行株については欧州の銀行株をどう見るかの記事で詳しく書きました。小売・外食は13社中8社がイギリスです。医薬・ヘルスケア、資本財・機械、自動車・部品はいずれもドイツが最多でした。
つまり、業種を選ぶことは、知らないうちに国を選ぶことにもなっているということです。高配当の業種を集めていくと、結果的に特定の国に集中してしまう。業種の偏りと国の偏りは表裏一体だと、今回の集計で改めて感じました。
まとめ:利回りだけで選ぶと、業種と国が同時に偏る
- 業種別に実測すると、保険4.58%から医薬・ヘルスケア1.71%まで約2.7倍の差
- ただし保険と銀行の差はわずかで、順位は日によって入れ替わる程度。「金融2業種が上位」という傾向で読むほうが実務的
- 利回りとPERはほぼ逆に動く。配当をもらう業種と、値上がりを期待される業種に分かれている
- 配当性向を見ると、医薬・ヘルスケアが低利回りなのは「配らずに投資している」からだと分かる
- 業種の偏りは、国の偏りでもある。銀行・公益はイタリア、小売・外食はイギリス、医薬・資本財・自動車はドイツに集中
配当利回りだけを並べて業種を選ぶと、気づかないうちに国も偏ってしまいます。その会社が何をしている業種なのかを一度見ておくと、この偏りに気づけると思います。高配当株だけで組むことの是非については、高配当株だけで組むのは正しいのかの記事でも書きました。
この記事の検証方法
- この記事は公開後に訂正しています。当初の実測スクリプトが当サイトの初期記事で取り上げた銘柄を集計対象から外していたため、業種の中央値が実態とずれていました。2026年9月2日に不具合を直したうえで、266銘柄を同じ日にあらためて一斉取得しています
- 業種名は取得元の分類をそのまま使わず、当サイトでまとめ直したものです。その際、3件を手作業で見直しています。電力・ガス小売のセントリカは「小売」ではなく「公益」に分類し直しました。家庭用品メーカーのレキットベンキーザーは店舗を持たないため小売から外しました。自動車保険のアドミラル・グループは、取得元の分類では自動車に入りますが保険会社であるため、自動車の集計から除外しています
- スウォッチ(実績PER1,054倍・配当性向2,600%)は他社と桁が違い、指標として比較できないため表から外しています
- 4社以上ある業種だけを掲載しています。3社以下の業種は、1社の数字に結果が左右されやすいため対象外としました
- 各業種の数値は中央値を使っています。平均だと極端な数字を出す1社に結果が引っ張られるためです
- 配当利回り・PER・配当性向は取得元の表示をそのまま使っており、日によって動きます。この記事の数値は2026年9月2日時点のものです
- この記事の数値は当サイトが取り上げた銘柄に限った集計であり、欧州市場全体を代表するものではありません
- 筆者はポルトガル在住で、インタラクティブ・ブローカーズ(IBKR)の口座から欧州株ETFを中心に保有しています(本記事に登場する銘柄を保有しているとは限りません)
この記事を書いた人:Kawa
ヨーロッパ在住30代・サイドFIRE中の兼業投資家。日本の証券会社では買えない欧州株を、現地から実際の数字で解説しています。詳しいプロフィール
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免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。記載のPER・配当利回り・配当性向は2026年9月2日時点で取得した情報にもとづいており、市場の変動により変更される場合があります。特定の業種・銘柄が割安・割高であることを示すものではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。当サイトは本記事の情報に基づく損失について一切の責任を負いません。

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