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この記事の結論
- 権利落ち履歴が4年分以上そろう230銘柄について、配当の年平均増加率を計算すると中央値は8.45%でした(2026年9月3日時点)
- 内訳は20%超が60社、10〜20%が47社、0〜10%が79社、マイナスが39社です
- 国別の中央値はスペイン15.4%が最高、スイス5.0%が最低で、南欧が高くスイス・ドイツが低い傾向があります
- 増加率トップ12社のうち6社が銀行ですが、これは経営が良いからではなく出発点が低かったからという側面があります
「何年連続で増配したか」は、当サイトの別記事で実測しました。ただ、連続増配の年数は取得できる履歴の都合で計測の上限が4年になってしまいます。一方、増加率であれば年数の制約を受けずに銘柄同士を比べられます。そこでこの記事では、「何年続けたか」ではなく「どのくらいの速さで増えたか」を実測しました。
結論からお伝えすると、増加率が高い銘柄を並べていくと、上位には銀行が目立ちます。ですが、これから見ていくとおり、その理由は経営の良し悪しというより、測り始めた年に何があったかという「出発点」の問題です。増加率という指標を読むときにいちばん注意したいポイントだと思います。
実測結果——年平均増加率の中央値は8.45%、20%超が60社
2026年9月3日、当サイトが記事化している欧州株について、権利落ち履歴から暦年ごとの配当合計を作り、4年分以上そろった230銘柄を対象に、最初の年から最後の年までの年平均増加率を計算しました。結果は次のとおりです。
| 年平均増加率 | 社数 |
|---|---|
| 20%超 | 60社 |
| 10〜20% | 47社 |
| 0〜10% | 79社 |
| マイナス | 39社 |
20%超という高い増加率の銘柄が60社ある一方、マイナス、つまり配当が減っている銘柄も39社あります。増配が続く銘柄ばかりではないという点は、まず押さえておきたいところです。全体の中央値は年8.45%でした。
国別の中央値——南欧が高く、スイス・ドイツが低い
同じデータを国別に集計すると、次のような差が見えます。
| 国 | 社数 | 年平均増加率の中央値 |
|---|---|---|
| スペイン | 27 | 15.4% |
| イタリア | 36 | 12.9% |
| フランス | 36 | 11.9% |
| イギリス | 39 | 10.0% |
| デンマーク | 14 | 8.4% |
| ドイツ | 42 | 7.0% |
| スイス | 36 | 5.0% |
最も高いスペインの15.4%と最も低いスイスの5.0%では、3倍以上の差があります。これも国そのものの差というより、業種別に実測した別記事で見た業種構成の差が関係していると考えられます。イタリアとスペインは銀行が最も多い業種構成で、スイスは医薬・ヘルスケアや資本財・機械が多く、もともと増配のペースが緩やかな業種です。国別の差の背景に業種があるという構図は、この記事の後半で見る「銀行が上位を占める理由」ともつながっています。
増加率トップ12——上位12社のうち6社が銀行
年平均増加率が高かった上位12社を並べると、次のようになります。
| 年平均 | 会社 | 国 | 業種 |
|---|---|---|---|
| +105% | BPERバンカ | 伊 | 銀行 |
| +103% | カイシャバンク | 西 | 銀行 |
| +94% | ダンスケ銀行 | 丁 | 銀行 |
| +82% | ゲームズワークショップ | 英 | ミニチュアゲーム |
| +78% | ウニカハ・バンコ | 西 | 銀行 |
| +77% | バンコBPM | 伊 | 銀行 |
| +75% | ウニクレディト | 伊 | 銀行 |
| +71% | エルメス | 仏 | ラグジュアリー |
| +69% | セントリカ | 英 | 電力・ガス小売 |
| +69% | スピー | 仏 | 技術サービス・設備工事 |
| +66% | トリグ | 丁 | 損害保険 |
| +64% | ヴァンシ | 仏 | 建設・インフラ |
上から数えて7位までのうち5社、12社のうちでは6社が銀行です。銀行の配当政策がとりわけ優れているように見えますが、この数字は少し慎重に読んだほうがよいと思います。
銀行が上位を占める理由は「出発点」
上位12社のうち6社が銀行なのは、経営が良いからではなく、出発点が低かったからだと考えられます。ECBは2020年3月から欧州の銀行に配当の自粛を求め、この要請は2021年9月まで続きました(当サイトがECB公式で確認)。今回の集計では、230銘柄のうち225銘柄は起点が2021年か2022年です。つまり、この記事が測っているのは直近4〜5年だけで、それより前の年は含まれていません。起点が2021年の銘柄は、ちょうどECBの配当自粛が明けたばかりの年から数え始めていることになります。
この点は、上位1位のBPERバンカの数字がはっきり示しています。BPERバンカの配当は2021年に0.040ユーロだったのが2025年には0.700ユーロと、17倍以上に増えています。ただし、これは2025年の配当が特別に高いというより、2021年の配当が極端に低かったことの裏返しでもあります。ECBの配当自粛が明けた直後の年を起点にすれば、そこから通常の水準に戻るだけでも、計算上の増加率は跳ね上がります。
ここから言えるのは、「増加率が高い=経営が良い」とは限らないということです。同じ会社でも、どの年を起点に測るかで数字は大きく変わります。これが、増加率という指標を見るときにいちばん注意したい落とし穴だと思います。増加率だけを見て銀行株の配当政策を高く評価する前に、起点の年に何があったかを確認したほうがよさそうです。
まとめ:増加率は「どこから測ったか」で変わる数字
- 実測すると、配当の年平均増加率の中央値は8.45%(230銘柄、2026年9月3日時点)。20%超が60社、マイナスが39社ある
- 国別ではスペインの15.4%が最高、スイスの5.0%が最低。南欧が高くスイス・ドイツが低い
- 増加率トップ12社のうち6社が銀行だが、これはECBの配当自粛が明けた直後を起点にした反動という側面がある
- 増加率を比べるときは、起点の年に何があったかを一度確認したほうがよい
増加率は高い順に並べると分かりやすい指標ですが、その中身は「どこから測ったか」で大きく変わります。高い順に並べる前に、起点の年に何があったかを見ておくと、読み違えが減ると思います。
この記事の検証方法
- 2026年9月3日に、当サイトが記事化している欧州株について、権利落ち履歴から暦年ごとの配当合計を作りました
- そのうち4年分以上そろった230銘柄を対象に、最初の年から最後の年までの年平均増加率を計算しています
- 起点は225銘柄が2021年か2022年です。この記事が測っているのは直近4〜5年だけで、それより前の増配実績は含まれていません
- ECBは2020年3月から欧州の銀行に配当の自粛を求め、2021年9月まで続きました(当サイトがECB公式で確認)。2021年を起点にした銀行の増加率には、この反動が含まれている可能性があります
- 国別・業種別の中央値は、各国・各業種の銘柄の増加率を小さい順に並べた際の中央の値です。業種構成の参考にした中央値は業種別に実測した別記事の集計によるもので、この記事単独の集計ではありません
- この記事の数値は当サイトが取り上げた銘柄に限った集計であり、欧州市場全体を代表するものではありません
- 本記事は「増加率が高いから今後も増える」ことを示すものではありません。過去の実績にもとづく集計です
- 筆者はポルトガル在住で、インタラクティブ・ブローカーズ(IBKR)の口座から欧州株ETFを中心に保有しています(本記事に登場する銘柄を保有しているとは限りません)
この記事を書いた人:Kawa
ヨーロッパ在住30代・サイドFIRE中の兼業投資家。日本の証券会社では買えない欧州株を、現地から実際の数字で解説しています。詳しいプロフィール
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免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。記載の配当増加率は2026年9月3日時点で権利落ち履歴から算出したものであり、過去の実績を示すものであって将来の配当や株価を保証するものではありません。特定の銘柄が優れている・劣っていることを示すものではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。当サイトは本記事の情報に基づく損失について一切の責任を負いません。

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