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欧州の医薬・ヘルスケア株をどう見るか|PER23.58倍・配当性向44%【2026年】

欧州の医薬・ヘルスケア株をどう見るか|PER23.58倍・配当性向44%【2026年】

※本記事にはアフィリエイト広告(プロモーション)が含まれます。

この記事の結論

  • 欧州の医薬・ヘルスケア株は「薬をつくる(製薬)」「他社の薬をつくる(CDMO)」「機器・診断」「体につける・入れる」の4層で、儲け方がまったく違います
  • 2026年9月2〜3日・256銘柄の実測では、医薬・ヘルスケアのPER中央値は23.58倍で8業種中2位でした(1位は資本財・機械の25.24倍、全体は18.18倍)
  • 配当利回り1.71%・配当性向44%はどちらも8業種で最も低い結果でした。稼いでいないのではなく、配らずに研究開発へ回している業種だと言えます
  • 特許切れ・顧客依存・薬価規制・開発失敗というリスクは、製薬・CDMO・機器で層ごとに違う形で効いてきます

この記事は公開後に集計の誤りが見つかったため、数字を見直しました。初期に取り上げた銘柄が集計から抜けており、医薬・ヘルスケアのPER中央値を「全業種で最も高い」としていましたが、これは誤りで、改めて256銘柄で確認すると資本財・機械に次ぐ2位でした。お詫びして訂正します。

「ヘルスケアは高齢化が追い風だから安泰」。この言い方は半分しか合っていないと思います。当サイトがこれまで個別に取り上げてきた欧州の医薬・ヘルスケア企業を見渡すと、扱っている中身は製薬会社もあれば、薬を一切持たずに他社の薬を製造だけする会社、画像診断装置を作る会社、補聴器やインプラントを作る会社まで、実にばらばらです。「ヘルスケア」とひとくくりにすると、儲け方の違いも、リスクの違いも見えなくなります。

この記事では、欧州の医薬・ヘルスケア株を4つの層に分けて整理したうえで、実測したPER・配当利回り・配当性向の数字から「この業種の評価はどういう性格のものか」を確認し、最後に層ごとのリスクを同じ熱量で見ていきます。

目次

医薬・ヘルスケアは一枚岩ではない――儲け方が違う4つの層

まず全体像です。当サイトが個別記事で扱っている欧州の医薬・ヘルスケア企業を、儲け方の違いで4つの層に分けると次のようになります。

儲け方特有の断崖当サイトで扱う企業(例)
①薬をつくって売る(製薬)自社開発の薬を特許期間中に売る特許切れで利益が落ちる「パテントクリフ」メルクイプセン、レコルダーティ、ALKアベロ、バヴァリアン・ノルディック
②他社の薬をつくる(CDMO)特許を持たず、製薬会社から受託製造する特許切れの断崖はないが、顧客の発注量に左右されるロンザジークフリートロビ
③機器・診断画像診断装置や検査機器を病院に販売病院の設備投資サイクルに連動し、景気の影響を受けやすいシーメンス・ヘルスイニアーズカールツァイス・メディテック、ディアソリン、アンブ、ザルトリウス
④体につける・入れるインプラントや補聴器を個人に販売加齢とともに需要が増える一方、価格競争もあるストローマン、ソノヴァ、デマント
当サイトの個別記事にもとづく分類。フレゼニウス(透析・病院運営)のように医療サービスとして別枠になる企業もあります

①の製薬会社は、特許が切れた瞬間に同じ成分の後発品が安く出てくるため、利益が急に落ちる崖があります。当サイトのイプセンの記事では、主力薬に後発品競争があることを記載しています。一方、②のCDMO(受託製造)は自社に特許を持たないので、この崖そのものがありません。そのかわり、注文をくれる顧客企業の都合に業績が左右されます。ロビの記事では、モデルナ向けの受託製造への依存が論点として記載されています。

③の機器・診断は、薬とは違う理由で業績が動きます。病院の予算がつかなければ、装置がどれだけ優れていても買い替えは先送りされます。景気に対する感応度は、①の製薬会社より高いというのが、当サイトが各社の決算を追ってきた実感です。④の体につける・入れる層(補聴器・インプラント)は、加齢とともに需要そのものが増える点で、4層のうちもっとも「高齢化の追い風」を素直に受けやすい層だと思います。

PER23.58倍は8業種で2位――高PER・低利回り・低配当性向が意味すること

この4層をまとめて「医薬・ヘルスケア」という業種でくくると、市場からの評価はどうなっているのか。2026年9月2〜3日時点で欧州株256銘柄を実測しました。結果は次のとおりです。

指標医薬・ヘルスケア8業種での位置
PER中央値23.58倍(17社)2位(1位は資本財・機械25.24倍。全体は18.18倍)
配当利回り中央値1.71%最も低い(最も高い保険は4.58%)
配当性向中央値44%最も低い(最も高い銀行は67%)
国の内訳独6・丁3・瑞3・伊2・西1・仏1ドイツが最多
2026年9月2〜3日時点の実測。配当利回りは日によって動く数字です

PER23.58倍は8業種の中で2位ですが、それでも全体の中央値18.18倍を大きく上回っています。PERが高いということは、それだけ将来の成長がすでに株価に織り込まれている、つまり「期待が入っている」ということです。今回の実測でも、②の層に属するザルトリウス(バイオ製薬用機器)はPER77.56倍でした。指標として比較できないスウォッチ(実績PER1,054倍)を除くと、256銘柄全体でバーバリー・フェラガモ・VATグループに次ぐ4番目の高さです。

この記事の核心は、PERの高さだけでなく配当利回り1.71%・配当性向44%がどちらも8業種で最も低いことにあります。同じく利回りが低い業種に資本財・機械(配当性向49%)がありますが、そちらは「株価が高いから利回りが低い」という理由です。医薬・ヘルスケアは配当性向そのものが低く、稼いでいないから配れないのではなく、稼いだ利益を配らずに研究開発へ回しているために利回りが低いという、性格の違う低さだと考えられます。つまりこの業種は、配当をもらうというより「開発の成果を待つ」投資であり、待つ間の見返りが小さいという性格を持っていると言えます。

リスクを同じ熱量で――特許切れ・顧客依存・薬価規制・開発失敗

「高齢化だから安泰」という言い方に足りないのは、リスクの部分だと思います。層ごとに整理すると次のとおりです。

  • 特許切れ(製薬)。主力薬の特許が切れれば、後発品との価格競争が始まります。前述のイプセンの例のとおりです。
  • 顧客依存(CDMO)。特定の顧客への売上依存度が高いと、その顧客の発注方針が変わるだけで業績が動きます。ロビは実績PER16.5倍に対して予想PERは20.5倍で、市場は減益を織り込んでいます。ただしこの予想PERはアナリスト予想であり、実際の着地とは外れることがある点には注意が必要です。
  • 薬価規制。欧州の多くの国では公的保険が薬の値段を決めるため、企業側の判断だけで値上げを通すのが難しい構造になっています。
  • 開発の失敗。新薬の治験が失敗すれば、それまでに投じた数年分の開発費がそのまま失われます。
  • 無配のリスク(装着・埋込を含む機器層)。欧州株全体で無配だった17社のうち5社が医薬・バイオ関連で、そのうち4社(アンブ・ALKアベロ・バヴァリアン・ノルディック・デマント)がデンマーク企業でした。高齢化という追い風のある業種でも、個別企業のレベルでは無配や減配が起きます。

日本の証券会社ではこれらの企業の株を直接買うことができません。SBI証券・楽天証券・マネックス証券は欧州の現地市場を取り扱っていないためで、個別に株を選んで持ちたい場合、日本からはサクソバンク証券がほぼ唯一の入り口になります。層ごとにリスクの性質が違うからこそ、1社に絞らず層をまたいで分散する意味があると筆者は考えます。

まとめ:どの層に投資しているかを意識する

  • 欧州の医薬・ヘルスケア株は製薬・CDMO・機器診断・装着埋込の4層で儲け方が違う
  • 2026年9月の実測(256銘柄)でPER中央値23.58倍は8業種中2位(1位は資本財・機械25.24倍)
  • 配当利回り1.71%・配当性向44%はどちらも最も低く、研究開発に回している業種だと言える
  • リスクは層ごとに違う。特許切れ(製薬)・顧客依存(CDMO)・薬価規制・開発失敗・無配(装着・埋込を含む機器層)を同じ熱量で見る
  • 個別株はサクソバンク証券が入り口。「どの層に投資しているか」を意識して選ぶことが大切だと思います

この業種は「人が老いる」という確実な追い風がある一方で、配当をもらうより開発の成果を待つ性格の投資でもあると思います。

この記事の検証方法

  • 本記事は公開後に集計の誤りが見つかり、数字を全面的に見直したものです。2026年9月2〜3日に256銘柄を取り直し、初期に取り上げた銘柄(ロシュ・バイエル・コロプラストなど)が集計から抜けていたことと、数値の読み取りに不具合があったことを修正しました。これにより「医薬・ヘルスケアのPER中央値は全業種で最も高い」としていた記載を「8業種中2位」に訂正しています
  • PER中央値(医薬・ヘルスケア23.58倍、256銘柄全体18.18倍)、配当利回り中央値1.71%、配当性向中央値44%、ザルトリウスのPER77.56倍は、いずれも2026年9月2〜3日時点の実測です。配当利回りは日によって動くため、この時点の数値として扱ってください
  • ロビの実績PER16.5倍・予想PER20.5倍は実測時点の数値です。予想PERはアナリスト予想であり、実際の着地とは異なる場合があります
  • イプセンの後発品競争、ロビのモデルナ向け依存、カールツァイス・メディテックの減配、無配企業の内訳は、いずれも当サイトの各社個別記事や関連記事にすでに記載している事実を引用しています
  • 4層の分類および各企業の事業内容は、当サイトの個別記事の記載にもとづく整理です
  • 本記事は特定の薬・治療法の効果には言及していません
  • 筆者はポルトガル在住で、インタラクティブ・ブローカーズ(IBKR)の口座から欧州株ETFを中心に保有しています(本記事で扱う個別企業を保有しているとは限りません)

この記事を書いた人:Kawa

ヨーロッパ在住30代・サイドFIRE中の兼業投資家。日本の証券会社では買えない欧州株を、現地から実際の数字で解説しています。詳しいプロフィール

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免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買や特定の医薬品・治療法を推奨するものではありません。記載のPER・配当等の数値は本文記載の各時点で確認した情報に基づいており、変更される場合があります。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。当サイトは本記事の情報に基づく損失について一切の責任を負いません。

Kawa
サイドFIRE生活中
ヨーロッパ在住30代。兼業投資家として株式投資、FX、不動産投資を行う。株式投資やFX取引では、ダウ理論とグランビルの法則を用いたテクニカル分析メインで、ファンダメンタルズ分析も組み合わせて投資判断を行う。欧州の不動産市場にも注力し、賃貸収入やキャピタルゲインを狙った長期的な投資を狙う。夢はボルゾイを飼うこと。
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