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この記事の結論
- ドイツ株の配当は、条約の限度税率(15%)を超えた11.375%分が還付対象です。窓口はBZSt(連邦中央税務庁・ボン)で、公式様式によるオンライン申請(BOP)が必要になります
- スイス株の配当は、条約の限度税率(10%)を超えた25%分が還付対象です。日本居住の個人が使う様式はForm 93 Iで、窓口はESTV(連邦税務庁)です
- 期限はドイツが4年、スイスが3年で、スイスのほうが1年短くなっています
- 実務上の壁は書類のほうにあります。ドイツはドイツ国内の支払代理人が発行する税務証明書が必要で、日本の証券会社を通じて入手できるかどうかは当サイトでは確認できていません
欧州株の配当には、現地の源泉税と日本の20.315%が二重にかかります。確定申告と外国税額控除を扱った記事で見たとおり、日本側の外国税額控除は条約の限度税率までしか戻しません。条約の限度税率を超えた分——ドイツなら11.375%、スイスなら25%——は、日本の税務署ではなく、ドイツやスイスの税務当局に直接請求しないと戻らない仕組みになっています。
この記事では、その「現地側」の手続きに絞って調べました。窓口はどこで、どの様式を、いつまでに出す必要があるのか。日本側の確定申告の手順や外国税額控除の計算は、こちらの記事に譲ります。
先にお断りしておくと、本記事は制度の一般的な説明であり、税務アドバイスではありません。以下の制度・税率・期限は2026年9月11日に一次資料で確認した内容ですが、個別の申告・還付請求は税理士や税務署、現地当局にご確認ください。
そもそも何が戻るのか——条約の限度税率を超えた分
還付の対象になるのは、現地の源泉徴収率と、日本との租税条約で決められた限度税率との差額です。条約が認める範囲を超えて徴収された分を、あとから請求して戻す仕組みです。ドイツとスイスでは、この差額が次のとおりです。
| 国 | 現地源泉税率 | 日本との限度税率 | 還付対象 |
|---|---|---|---|
| ドイツ | 26.375% (資本所得税25%+連帯付加税5.5%) | 15% | 11.375% |
| スイス | 35% (予納税/Anticipatory Tax) | 10% | 25% |
| フランス | 12.80% (2026年1月1日時点の実効税率) | 10% | 2.8% |
ドイツの源泉徴収率26.375%は、資本所得税25%と、その25%に対して課される連帯付加税5.5%を合わせたものです。根拠となるのはドイツ所得税法第50c条第3項(section 50c (3) EStG)で、ドイツ国内で生じた資本所得を受け取る非居住者(個人・法人とも)が対象になります。スイスの35%は予納税(Anticipatory Tax)と呼ばれ、スイス企業の配当のほか、スイス発行体の債券利子やスイスの銀行預金利子にもかかります。
なお、この記事で扱うのはドイツとスイスの2か国です。イギリス・イタリア・スペイン・デンマークについても現地の還付制度があるかもしれませんが、当サイトではまだ確認できていません。
ドイツ:BZStに電子申請する
ドイツの還付請求の窓口は、連邦中央税務庁(BZSt)です。所在地はボンで、ドイツ所得税法第50c条第3項にもとづく還付手続きを扱っています。BZStの公式ページには、公式様式によらない申請は法的効力を持たないと明記されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 窓口 | 連邦中央税務庁(BZSt)・ボン |
| 根拠条文 | ドイツ所得税法 第50c条第3項 |
| 様式 | 公式様式が必須。様式によらない申請は法的効力を持たない |
| 提出方法 | BZStのオンラインポータル(BOP)経由 |
| 期限 | 資本所得が生じた暦年の末日から4年以内。ただし納付から1年を経過するまでは申請できない(条約に別段の定めがある場合を除く) |
| 必要書類 | ①居住者証明書(certificate of residence) ②税務証明書(tax certificate)——ドイツ国内の支払代理人(domestic paying agent)が発行し、所得の種類・金額・源泉徴収額を証明するもの |
提出はBZStのオンラインポータル(BOP)経由で、期限は資本所得が生じた暦年の末日から4年以内です。ただし納付から1年が経過するまでは申請できない、とも公式ページにあります。
必要書類は2種類あります。ひとつは居住者証明書(certificate of residence)で、日本の税務署から取り寄せることになります。もうひとつは税務証明書(tax certificate)で、ドイツ国内の支払代理人(domestic paying agent)が発行し、所得の種類・金額・源泉徴収額を証明します。
スイス:日本居住の個人はForm 93 I
スイスの還付請求の窓口は、連邦税務庁(ESTV)です。対象になるのは、租税条約がある国に居住する個人・法人で、条約の内容に応じて全額または一部が還付されます。日本居住者の場合、租税条約の限度税率は10%のため、35%との差額である25%が還付対象になります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 窓口 | 連邦税務庁(ESTV) |
| 対象 | 租税条約がある国に居住する個人・法人 |
| 日本居住者向けの様式 | Form 93 I(個人向け)。ほかに93 C(法人)・93 G(国・地方公共団体)・93 P(年金基金)がある。いずれも2023年1月1日以降に支払期日が来た分に適用(それ以前は旧版) |
| 期限 | 課税対象となる給付の支払期日が属する暦年の末日から3年以内。過ぎると請求権が消滅する |
| 処理期間 | 公式ページに「数か月かかることがある」と明記。請求書の受領確認は行われない |
| 問い合わせ | 国際金融事務局(SIF)/ dba@sif.admin.ch |
日本居住の個人が使う様式はForm 93 Iです。2023年1月1日以降に支払期日が来た分に適用される様式で、それより前の支払分には旧版の様式が使われます。期限は、課税対象となる給付の支払期日が属する暦年の末日から3年以内です。ドイツの4年と比べると、スイスのほうが1年短く、うっかり先延ばしにしていると請求権そのものが消滅してしまう点には注意が必要です。
もうひとつ実務上気になるのが、処理にかかる時間です。ESTVの公式ページには「数か月かかることがある」と明記されており、さらに請求書を受け取ったという確認の連絡も行われないと記載されています。申請してからしばらくは、状況を問い合わせる手段が限られるということになります。
フランス:原則12.8%で、条約との差は2.8%
フランスは、ドイツやスイスとは事情が少し違います。フランスが非居住者に支払う配当に課す源泉税は、原則12.80%です(2026年1月1日時点の実効税率)。一方、日仏租税条約の限度税率は10%とされています。差は2.8%で、ドイツの11.375%やスイスの25%と比べるとかなり小さい数字です。
ただし、当サイトで確認できていない点があります。この2.8%の軽減が源泉徴収の時点で自動的に適用されるのか、それとも12.8%が引かれたうえで自分で請求することになるのか、という点です。お取引の証券会社がどちらの扱いをしているかは、各社にご確認ください。
フランスにも公式の様式があり、様式5000が居住証明、様式5001が配当の源泉税の計算と還付にあたります。年10万円の配当なら差額は2,800円ですので、手続きを取るかどうかの判断は、ドイツやスイスより付けやすいのではないかと思います。
実際の壁は書類のほう
ここまで窓口と様式、期限を見てきましたが、この記事でいちばん伝えたいのはここからです。手続きそのものより先に立ちはだかるのは、必要書類をそろえられるかどうかという壁だと考えています。
ドイツの還付請求には、居住者証明書に加えて、ドイツ国内の支払代理人(domestic paying agent)が発行する税務証明書が必要です。日本の証券会社を通じてドイツ株を保有している場合、この証明書を実際に入手できるのかどうかは、当サイトでは確認できていません。「もらえない」と決めつけることはできませんが、「もらえる」とも言い切れない状態です。気になる方は、お取引されている証券会社に直接お問い合わせいただくのが確実だと思います。
期限の差も、実務ではじわじわ効いてきます。ドイツが4年、スイスが3年という違いは、書類をそろえるのに時間がかかるほど重くなります。居住者証明書を税務署から取り寄せ、現地の支払代理人から証明書を受け取り、公式様式に記入してオンラインで提出する——この一連の作業を、期限内に終える必要があります。本記事は制度の一般的な説明であり、税務アドバイスではありませんので、実際に着手される場合は、税理士や税務署、現地当局に事前にご確認いただくことをおすすめします。
残る4か国:イタリア・スペイン・デンマークにも制度はあり、イギリスは請求自体が不要
残る4か国も同じ日に各国税務当局の公式ページで確認しました。イタリアは源泉税26%に対して日伊租税条約の限度税率が15%で、超過分の還付請求はペスカーラの事務センターへ、源泉徴収の日から48か月以内です。スペインは19%に対して条約5%で、Modelo 210という様式を翌年2月1日から4年以内に出します。デンマークは27%に対して条約15%で、税務庁のデジタル申請を源泉徴収から5年以内に行います。いずれも居住者証明書が必要です。
イギリスは事情が違い、通常の会社配当に源泉徴収がありません。取り戻す対象がないため、請求は不要です。7か国の税率をひとつの表で比べたものは、配当税を国別に比較した記事に置いています。
割に合うのか——年10万円の配当で試算する
金額の目安を確認します。スイス株の配当が年10万円なら、還付対象は25,000円。ドイツ株の配当が年10万円なら、還付対象は11,375円です。この数字は、確定申告と外国税額控除を扱った記事で示した数字と同じです。
この金額を、居住者証明書の取り寄せ、証明書の入手可否の確認、公式様式への記入、提出、数か月の処理待ちという作業と引き換えにできるかは、人によって変わるところだと思います。配当額が増えれば還付額も比例して増えるため、分かれ目は保有額によって動きます。
まとめ:制度としては戻るが、書類が実務の壁になる
- ドイツ株の還付対象は11.375%、窓口はBZSt、様式はBOP経由のオンライン申請、期限は4年
- スイス株の還付対象は25%、窓口はESTV、様式はForm 93 I(個人向け)、期限は3年
- スイスの期限はドイツより1年短いため、後回しにすると請求権が消滅するおそれがある
- 実務上の壁は、ドイツ国内の支払代理人が発行する税務証明書。日本の証券会社を通じて入手できるかは当サイトでは確認できていない
- 年10万円の配当なら、還付対象はスイス株25,000円・ドイツ株11,375円
制度としては、条約の限度税率を超えた分は現地の当局に請求すれば戻ります。ただ筆者は、配当が年に数十万円規模になるまでは、自分では手を出さないと思います。理由は、戻ってくる金額よりも、居住者証明書の取り寄せや現地様式への対応にかかる手間のほうが重いと感じるからです。特にドイツの税務証明書のように、入手できるかどうか自体がはっきりしない書類が絡むと、確認だけでも時間がかかります。
そのうえで筆者は、「現地税は取り戻せない前提で、実質の利回りを見ておく」ほうが、投資判断を間違えにくいと思います。配当税を国別に比較した記事で実質利回りの考え方を扱っていますので、あわせてご覧ください。書類の手間が苦にならない方や、配当額がまとまっている方には、検討する価値があると思います。その場合も、最終的な判断は税理士や現地当局にご確認ください。
この記事の検証方法
- ドイツの制度は、BZStの公式ページを2026年9月11日に当サイトが確認しました
- スイスの制度は、ESTVの公式ページと日本向けの様式ページを2026年9月11日に当サイトが確認しました
- 日独租税協定の限度税率15%、日瑞租税条約の限度税率10%は、当サイトの既存記事で確認済みの数字を使用しています
- 日本の証券会社がドイツの税務証明書(支払代理人発行分)を発行できるかどうかは、当サイトでは確認できていません。お取引される証券会社に個別にご確認ください
- フランスの制度は、フランス税務当局の公式ページを2026年9月11日に当サイトが確認しました。イギリス・イタリア・スペイン・デンマークの現地還付制度は、当サイトではまだ確認できていません
- 本記事は制度の一般的な説明であり、税務アドバイスではありません。個別の申告・還付請求は税理士や税務署、現地当局にご確認ください
- 記載の制度・税率・期限は2026年9月11日時点のものです。制度は変わることがあるため、手続きの前に必ず公式の最新情報をご確認ください
- 筆者はポルトガル在住で、インタラクティブ・ブローカーズ(IBKR)の口座から欧州株ETFを中心に保有しています
この記事を書いた人:Kawa
ヨーロッパ在住30代・サイドFIRE中の兼業投資家。日本の証券会社では買えない欧州株を、現地から実際の数字で解説しています。詳しいプロフィール
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免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。本記事は制度の一般的な説明であり、税務アドバイスではありません。記載のドイツ・スイスの還付制度、税率、期限は2026年9月11日に当サイトが一次資料で確認した内容にもとづいており、制度の変更により内容が変わる場合があります。個別の申告・還付請求については、税理士や税務署、現地当局に必ずご確認ください。日本の証券会社が発行できる書類の範囲については証券会社に個別にご確認ください。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。当サイトは本記事の情報に基づく損失について一切の責任を負いません。

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