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この記事の結論
- 2026年9月2〜3日に実測したスペイン株29社は、浮動株比率の中央値が46.9%で、7か国のうち最も低い結果でした
- 一方で配当の年平均増加率は22.7%で、7か国のうち最も高いという、逆方向の極端さも同時に持っています
- 無配の会社は0社で、7か国のうち無配がゼロなのはスペインだけです
- 浮動株比率が低い理由は観察にとどまり、個々の会社の株主構成までは確認できていません。配当の増加率の高さも、銀行の測り方に割り引く事情があります
欧州7か国の株を実測していく中で、スペインだけ数字の出方が違う指標が2つありました。ひとつは浮動株比率、もうひとつは配当の年平均増加率です。前者は7か国で最も低く、後者は7か国で最も高い。方向は逆ですが、どちらも「極端」という点では共通しています。
この記事では、2026年9月2〜3日にスペイン株29社を対象に実測した数字をもとに、この2つの極端さの中身と、そこから断定できないことを整理します。PER・配当利回り・配当性向といった基本指標もあわせてご覧ください。
| 指標 | スペイン | 7か国での位置 |
|---|---|---|
| PER中央値 | 16.18倍 | 2番目に低い |
| 配当利回り中央値 | 3.12% | 中位 |
| 配当性向中央値 | 48% | 低め |
| 浮動株比率 | 46.9% | 最も低い |
| 配当の年平均増加率 | 22.7% | 最も高い |
| 無配の会社 | 0社 | 7か国で唯一ゼロ |
浮動株比率46.9%は7か国で最も低い——ただし理由は断定できない
浮動株比率とは、発行済み株式のうち市場で自由に売買されている株の割合を指します。スペイン株29社の中央値は46.9%で、これは実測した7か国の中で最も低い数字です。裏を返せば、残り半分以上の株式は、創業家や自治体、あるいは持ち合いのような形で、市場に出回らずに保有され続けている計算になります。
「創業家や自治体が保有し続けている会社が多いのではないか」というのは、この数字から浮かぶひとつの見立てです。ただ、これはあくまで観察であって、29社それぞれの株主名簿を一社ずつ確認したわけではありません。どの会社を誰がどれだけ持っているかを個別に確認できていない以上、「スペイン株は創業家が支配している」というような言い切りはできないと思います。
もうひとつ気をつけたいのは、この低さを業種構成だけで説明しきれない点です。国と業種の関係を実測した別記事では、国によって多い業種に偏りがあることを確認していますが、浮動株比率の低さは業種の偏りだけでは説明が難しく、スペインという国そのものに何らかの傾向がある可能性を残しています。ここは、業種の話と切り分けて考えたほうがよいところです。
浮動株比率が低いということは、実際に市場で取引されている株数が発行済み株式数より少ないということでもあります。浮動株比率を7か国で比較した別記事では、英国の97.6%とスペインの46.9%という両極端を扱っています。売買のしやすさという観点では、この差は頭に入れておいたほうがよいと思います。
配当の年平均増加率22.7%は最も高い——ただし銀行の事情を割り引く必要がある
スペイン株のもうひとつの極端さが、配当の年平均増加率です。実測では22.7%となり、これも7か国の中で最も高い数字でした。単純に受け止めれば「配当が増えるペースが速い国」という印象になりますが、この数字には割り引いて読むべき事情があります。
配当の増加率を7か国で実測した別記事で触れたとおり、増加率は出発点が低いほど数字が大きく出やすい指標です。ECBは2020年3月から2021年9月まで、資本の温存を目的に域内の銀行に配当の自粛を求めていました。スペインには銀行が3社含まれており、この期間に配当を大きく落とした銀行が、その後の回復局面で高い増加率を記録している可能性があります。
つまり、22.7%という数字の一部は「増え方が速い」というより「一度落ちた分を取り戻した」という側面を含んでいると考えられます。配当の増加率を国同士で比べるときは、出発点がどこにあったかを合わせて見たほうがよいと思います。
実測では、4年連続で増配している51社のうち6社がスペインの会社でした(バンキンテル、ビスコファン、ロヒスタ、ミケル・イ・コスタス、インディテックス、イベルドローラ)。銀行の回復局面だけでなく、継続的に増配を重ねている会社も一定数あることは付け加えておきます。
無配ゼロと7月に寄る権利落ち——スペインだけの特徴
7か国の無配企業を実測した別記事では、無配の会社が全部で17社見つかりました。この17社の中に、スペインの会社は1社も入っていません。7か国のうち無配ゼロだったのはスペインだけで、デンマークの9社とは対照的な結果でした。スペインで実測対象になった会社は、いずれも何らかの配当を出し続けている会社ばかりということになります。
配当性向の面でも特徴があります。配当性向80〜100%の15社のうち2社がスペインの会社で、エナガス(90%)とレデイア(89%)は、どちらもインフラ関連の会社です。また、PERが15倍以下で利回り3%以上、配当性向80%以下という条件に当てはまる54社のうち、8社がスペインの会社でした。
もうひとつ、スペインだけに見られる特徴が権利落ち日の時期です。権利落ちの月別集計を見ると、欧州全体では4〜5月に集中する傾向があるのに対し、スペインだけは7月に最も多く(17社)権利落ちが寄っています。7か国の中で、夏場に権利落ちが集中するのはスペインだけでした。配当を受け取るタイミングを意識する場合は、この時期のずれを知っておくとよいと思います。
売買のしやすさという点にも触れておきます。実測では、10万円あたりの片道手数料負担率はスペインで1.02%でした。浮動株比率の低さと合わせて考えると、スペイン株は他の6か国に比べて、まとまった金額を動かすときの取引コストや流動性を意識したほうがよい市場だと思います。
まとめ:公益と銀行が中心の、はっきりした性格の市場
実測対象のスペイン株29社は、公益5社・銀行3社・保険2社・自動車2社という顔ぶれで、公益と銀行が中心の市場です。業種別の実測では、公益の利回り中央値は4.07%、銀行は4.33%と、どちらも利回りが高めの業種でした。配当を出す会社が多く、無配企業がゼロという結果は、この業種構成とも整合的だと思います。
- 浮動株比率46.9%は7か国で最も低く、配当の年平均増加率22.7%は最も高いという、逆方向の極端さを持っています
- 無配の会社は0社。7か国で無配がゼロなのはスペインだけです
- 増加率の高さは、ECBの配当自粛(2020年3月〜2021年9月)で落ち込んだ銀行の回復局面を含んでおり、割り引いて読む必要があります
- 権利落ちは7月に最も多く寄る、7か国で唯一の市場です
- 浮動株比率の低さから株主構成を断定することはできませんが、10万円あたりの片道手数料負担率1.02%とあわせて、売買の薄さは頭に置いておきたいところです
スペイン株は、公益と銀行が中心で配当を出す会社ばかりという、はっきりした性格の市場だと思います。ただし、浮動株比率の低さが示す売買の薄さだけは、他の6か国と比べたときに意識しておいたほうがよいところです。
この記事の検証方法
- 浮動株比率・配当の年平均増加率・無配社数などの指標は、2026年9月2〜3日にスペイン株29社を対象に実測したものです
- 7か国での順位づけ(最も低い・最も高いなど)は、当サイトの他の実測記事(浮動株比率・配当増加率・無配企業・権利落ち時期・手数料負担率をそれぞれ7か国で集計した記事群)の数字と突き合わせています
- 浮動株比率が低い理由についての記述は観察であり、確定した事実ではありません。29社それぞれの株主構成は個別に確認しておらず、誰が保有しているかを断定するものではありません
- 配当の増加率とECBの銀行配当自粛(2020年3月〜2021年9月)の関係は、増加率の計算上の性質にもとづく推測であり、個々の銀行の配当方針を確認したものではありません
- スペインの配当課税については、当サイトでは確認できていません。実際の税率や還付手続きは、口座をお持ちの証券会社にご確認ください
- 権利落ち日の月別集計は、実測対象とした銘柄の権利落ち日にもとづく集計です
- 本記事の数値は実測対象とした銘柄に限った集計であり、スペイン市場全体を代表するものではありません
- 筆者はポルトガル在住で、インタラクティブ・ブローカーズ(IBKR)の口座から欧州株ETFを中心に保有しています(本記事に登場する銘柄を保有しているとは限りません)
この記事を書いた人:Kawa
ヨーロッパ在住30代・サイドFIRE中の兼業投資家。日本の証券会社では買えない欧州株を、現地から実際の数字で解説しています。詳しいプロフィール
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免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。記載の数値は2026年9月2〜3日時点で実測した情報にもとづいており、市場の変動により変更される場合があります。特定の銘柄・市場が割安・割高であることを示すものではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。当サイトは本記事の情報に基づく損失について一切の責任を負いません。

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