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この記事の結論
- BMW・メルセデス・フォルクスワーゲンはPER5〜9倍、ポルシェだけPER約47.5倍(2025年通期営業利益92.7%減で分母が縮小した結果)
- 配当利回りは表面7%台でも、ドイツの源泉税を差し引くと実質は4%台
- 4社ともフランクフルト証券取引所上場でSBI・楽天・マネックスでは買えず、NISAも不可
- 中国販売の落ち込み(20〜32%減)が4社共通のリスクで、分散しても消えない
PER5.69倍のBMWと、PER47.5倍のポルシェ。同じドイツの自動車メーカーで、同じフランクフルト証券取引所に上場していて、この差です。
この開きは「スポーツカーブランドが高く評価されている」という話ではありません。ポルシェの2025年通期の営業利益が前年比92.7%減となり、PERの分母である利益が消し飛んだ結果です。この記事では、当サイトで個別に扱ってきたBMW・メルセデス・ベンツ・ポルシェAG・フォルクスワーゲンの4社を、株価・PER・配当利回り・手数料負担率まで同じ物差しで並べます。数字はすべて2026年8月13日終値時点、ユーロ円183.9円換算です。
ドイツ自動車株4社比較(2026年8月13日終値)
| 銘柄(ティッカー) | 株価(1株の円換算) | PER | 配当利回り 表面/実質 | 時価総額 | 直近業績の方向感 |
|---|---|---|---|---|---|
| BMW (BMW) | 58.76ユーロ 約1万800円 | 約5.69倍 | 7.49% 約4.39% | 約350億ユーロ | 上半期の世界販売−4.2%、中国−20.4%。欧州BEVは+38.0% |
| メルセデス・ベンツ (MBG) | 45.44ユーロ 約8,350円 | 約8.93倍 | 7.70% 約4.52% | 約415億ユーロ | 第1四半期の世界販売−6%、中国−27%(最上級車が失速) |
| ポルシェAG (P911) | 43.91ユーロ 約8,070円 | 約47.5倍 | 2.30% 約1.35% | 約395億ユーロ | 2025年通期の営業利益−92.7%。2026年上半期は増益に転換 |
| フォルクスワーゲン (VOW3・優先株) | 72.94ユーロ 約1万3,400円 | 約7.0倍 | 7.21% 約4.23% | 約365億ユーロ | 上半期の営業利益−11.6%、中国納車−25.9% |
※実質利回りは「表面利回り×(1−ドイツ源泉税26.375%)×(1−日本の課税20.315%)」で算出した概算です。時価総額は上場している株式クラスの株価をもとにした概算で、BMW・フォルクスワーゲン・ポルシェAGは議決権のある普通株と議決権のない優先株が分かれているため、集計方法によって数字が変わります。
並べてみると分かることが3つあります。①ポルシェだけPERが桁違いに高い。②ポルシェ以外の3社は配当利回りが7%台で揃っている。③時価総額は4社とも350〜415億ユーロの範囲に収まっていて、ブランドの知名度ほどの差がない。この3点を順に見ていきます。
同じ「ドイツ車」でも中身は全く違う
4社は「ドイツ自動車株」とひとくくりにされがちですが、誰が会社を支配しているか、どのブランドを抱えているかが全く違います。ここを取り違えると、買った株が想像と違う値動きをします。
BMWとメルセデスは独立、ポルシェはVW傘下
- BMW:他グループの傘下に入らない独立系。クヴァント家のシュテファン・クヴァント氏(約25.8%)とスザンネ・クラッテン氏(約20.9%)で合計約47%を一族が保有しており、支配構造が安定しています。ミニとロールス・ロイス・モーターカーズを傘下に持ちます(航空機エンジンの上場企業ロールス・ロイス・ホールディングスとは別会社です)
- メルセデス・ベンツ・グループ:支配株主のいない独立系ですが、大株主に中国の北京汽車(BAIC)と吉利(ジーリー)の創業者が名を連ねます。中国での販売が減る一方、株主構成では中国資本の存在感が大きいという構造です
- ポルシェAG:フォルクスワーゲンAGの子会社。2022年にフランクフルトへ分離上場しましたが、資本関係は続いています
- フォルクスワーゲン:VW・アウディ・シュコダ・セアト/クプラ・ベントレー・ランボルギーニ、そしてポルシェを束ねる欧州最大の自動車グループ。持株会社ポルシェSEが議決権の過半を握り、ニーダーザクセン州とカタールが続きます
つまり、フォルクスワーゲン株(VOW3)を買うことは、ポルシェとアウディとランボルギーニをまとめて買うことに近い。一方でポルシェ株(P911)はスポーツカー1ブランドに賭ける買い方になります。同じ「ポルシェ」でも中身が全く違います。
ポルシェAGは「議決権のない株」しか買えない
ここは他ではあまり書かれていない点です。ポルシェAGで市場に流通しているのは、議決権のない優先株だけです。議決権のある普通株はフォルクスワーゲンAGが75%−1株、ポルシェSEが25%+1株を保有しており、1株も市場に出ていません。しかも優先株についてもフォルクスワーゲン側が大半を持ち続けているため、実際に売買されているのは発行済株式のごく一部です。
同じ構造はフォルクスワーゲンにもあります。ティッカー「VOW3」の末尾の3は優先株(議決権なし)を意味し、取引量が多く配当もわずかに高いのはこちらです。2026年の配当決議でも、普通株1株5.20ユーロに対して優先株は5.26ユーロでした。
もう1つ紛らわしいのが「ポルシェSE」と「ポルシェAG」です。ポルシェSE(PAH3)はフォルクスワーゲンを支配する持株会社で、車を作っている会社ではありません。当サイトが扱っているのは車を作っているポルシェAG(P911)のほうです。
PER47倍と5倍をどう読むか
PERは「株価÷1株あたり利益」です。株価が上がっても、利益が減っても、同じように数字は大きくなります。ポルシェの47.5倍は完全に後者です。
ポルシェのPER47.5倍は「利益が消えた」結果
ポルシェAGの2025年通期の営業利益は4億1,300万ユーロ。前年の56億4,000万ユーロから92.7%減りました。最大の要因はEV戦略の転換に伴う39億ユーロ規模の減損・特別費用です。加えて中国での販売が2025年に4万1,900台まで落ち込み、2021年のピーク(9万5,700台)から約56%縮小しました。米国の輸入関税も重荷になっています。
PERの分母が15分の1近くまで縮めば、株価が下がっていても倍率は跳ね上がります。ポルシェのPER47.5倍は「市場が高く評価している」証拠ではなく、「利益が異常に小さい」証拠です。この2つは投資判断としては真逆の意味を持ちます。
ただし話には続きがあります。2026年上半期のポルシェは、販売台数が減ったにもかかわらず営業利益が前年同期比で3割以上増えました。コスト構造の立て直しが効き始めており、分母である利益はすでに回復に向かっています。利益が戻れば、株価が動かなくてもPERは自動的に下がります。一方で中国販売は2026年上半期も前年同期比32%減の1万4,501台と、下げ止まっていません。「立て直しに賭ける銘柄」であって、安定配当を取りに行く銘柄ではないというのが実態です。詳しくはポルシェAGの個別記事で解説しています。
BMW5.69倍・VW7.0倍は「割安」ではなく「警戒」
逆に低いほうも、そのまま「割安」と読むのは危険です。BMWの5.69倍、フォルクスワーゲンの7.0倍という一桁PERは、市場が「今の利益は続かない」と見ていることの裏返しです。
- BMW:2026年上半期の世界販売は約115万台で前年比−4.2%。中国は−20.4%。ただし欧州は+5.4%、欧州のBEV販売は+38.0%と伸びており、次世代EV「ノイエ・クラッセ」への期待もあります
- フォルクスワーゲン:2026年上半期の営業利益は前年同期比−11.6%、純利益は−30.7%。中国納車は−25.9%で97万3,000台、米国のBEV納車は関税と補助金終了で−68.8%。一方で欧州のBEV受注残は年末時点から50%以上増えています
- メルセデス・ベンツ:PER8.93倍。2026年第1四半期の世界販売は−6%、中国は−27%。利益率の高い最上級車(Sクラス等)が落ちているため、販売減より利益への打撃が大きく出ています
4社に共通する震源地は中国です。PERが5倍でも47倍でも、原因をたどると同じ場所に行き着きます。「PERが低いから安全」「PERが高いから人気」という読み方は、この4社にはどちらも当てはまりません。
配当7%台に見えるが、実質はこうなる
BMW7.49%、メルセデス7.70%、フォルクスワーゲン7.21%。日本株ではまず見ない水準です。ただしドイツ株の配当には現地で26.375%(キャピタルゲイン課税25%+連帯付加税)が源泉徴収され、その残りに日本で20.315%が課税されます。手元に残るのは表面の約59%です。
| 銘柄 | 年間配当(1株) | 表面利回り | ドイツ源泉税26.375%控除後 | 日本課税20.315%後=実質 | 1株あたりの手取り |
|---|---|---|---|---|---|
| メルセデス・ベンツ | 3.50ユーロ | 7.70% | 5.67% | 約4.52% | 約378円 |
| BMW | 4.40ユーロ | 7.49% | 5.51% | 約4.39% | 約475円 |
| フォルクスワーゲン | 5.26ユーロ | 7.21% | 5.31% | 約4.23% | 約567円 |
| ポルシェAG | 1.01ユーロ | 2.30% | 1.69% | 約1.35% | 約109円 |
7%台が4%台まで削られます。日独租税条約の限度税率は15%で、確定申告の外国税額控除で調整できるのはそこまでです。26.375%と15%の差である約11.375%は日本の外国税額控除の対象外で、取り戻すにはドイツ税務当局へ直接還付請求する必要があります。実務上、個人投資家がこの手続きを取るのは現実的ではありません。
もう1つ見落としやすいのが、この高利回りは株価が下がった結果でもあるという点です。BMWは52週高値97.92ユーロに対して現在58.76ユーロ、フォルクスワーゲンは高値109.15ユーロに対して72.94ユーロ。株価がほぼ4割下がったから、利回りが7%台に見えている面があります。配当が据え置かれる保証はありません。
国ごとの配当課税の違いは欧州株の配当税を国別に比較した記事で、他の高配当銘柄との比較は欧州の高配当株ランキングで整理しています。
価格帯で見る「買いやすさ」と手数料の壁
1株の値段は8,070円から1万3,400円まで、そこまで大きな差はありません。ただしサクソバンク証券のドイツ株の手数料は0.088%、最低3.30ユーロ(約607円)で、少額で買うほど最低手数料の比率が跳ね上がります。
| 銘柄 | 1株の円換算 | 1株買いの手数料負担率 | 10株買いの手数料負担率 |
|---|---|---|---|
| ポルシェAG | 約8,070円 | 約7.5% | 約0.75% |
| メルセデス・ベンツ | 約8,350円 | 約7.3% | 約0.73% |
| BMW | 約1万800円 | 約5.6% | 約0.56% |
| フォルクスワーゲン | 約1万3,400円 | 約4.5% | 約0.45% |
1株だけ買うと、BMWなら配当9か月分近くが手数料で消えます。最低手数料が効かなくなるのは約定金額が3,750ユーロ(約69万円)を超えてからなので、4社とも10株単位でまとめて買うのが現実的です。10株なら8万円台〜13万円台で、負担率は1%を切ります。
4社に共通する注意点
- SBI証券・楽天証券・マネックス証券では買えません。4社ともフランクフルト証券取引所(Xetra)上場で、米国ADRはOTC(店頭市場)どまり。楽天証券はOTC銘柄について「新規の買付けは受け付けておりません」と明記しています(詳しい理由はこちら)
- NISAは使えません。サクソバンク証券はNISAに対応していないため、配当も売却益も課税口座での取り扱いになります
- 為替リスクがあります。株価も配当もユーロ建てです。円高ユーロ安が進めば、円換算の資産価値も実質利回りも下がります
- 中国市場への依存が4社共通の最大リスクです。中国−20.4%(BMW)、−27%(メルセデス)、−25.9%(VW)、−32%(ポルシェ)と、程度の差はあれ全社が同じ方向を向いています。地場EVブランドとの競争が主因とされ、会社側から明確な回復時期は示されていません。4社に分散しても、この中国リスクだけは分散されません
- EV移行のコストが利益を圧迫しています。ポルシェの39億ユーロの減損はEV戦略の転換によるもので、フォルクスワーゲンの2025年通期の大幅減益も同じ根から出ています
- 米国の関税環境が流動的です。フォルクスワーゲンの米国BEV納車は関税と補助金終了で68.8%減、ポルシェも関税を減益要因に挙げています
まとめ
- 当サイトで扱ったドイツ自動車株はBMW・メルセデス・ベンツ・ポルシェAG・フォルクスワーゲンの4社。すべてフランクフルト上場で、国内大手ネット証券では買えない
- ポルシェのPER47.5倍はブランドへの高評価ではない。2025年通期の営業利益が92.7%減(56億4,000万ユーロ→4億1,300万ユーロ)となり、PERの分母が縮んだ結果
- BMW5.69倍・VW7.0倍の一桁PERも「割安」ではない。中国販売の減少が続くという市場の警戒が織り込まれている
- 配当利回りは表面7%台でも実質は4%台。ドイツの源泉税26.375%のうち条約限度15%を超える約11.375%は、日本の外国税額控除では取り戻せない
- 高利回りは株価が高値から約4割下がった結果でもある。BMWは52週高値97.92ユーロ→58.76ユーロ、VWは109.15ユーロ→72.94ユーロ
- 1株買いは手数料負担率が4.5〜7.5%と重い。最低手数料3.30ユーロの影響を薄めるには10株単位(8万円台〜13万円台)が現実的
- 4社に分散しても中国リスクは分散されない。中国販売は4社とも20〜32%減で同じ方向を向いている
| こんな人は | やり方 |
|---|---|
| 10株単位でまとめ買いできる | サクソバンク証券で現物 |
| NISAの非課税で持ちたい | IB証券という選択肢もある(比較記事へ) |
| 短期の値動きだけ取りたい | CFD(現物保有はできない) |
この記事の検証方法
- 手数料はサクソバンク証券の公式手数料表から計算しています
- 株価・為替レートは本文記載の基準日に実測した値です
- 業績・配当は企業の公式IR資料(一次資料)のみを出典としています
- 筆者はヨーロッパ在住で、インタラクティブ・ブローカーズ(IBKR)の口座で欧州株を実際に保有しています
この記事を書いた人:Kawa
ヨーロッパ在住30代・サイドFIRE中の兼業投資家。日本の証券会社では買えない欧州株を、現地から実際の数字で解説しています。詳しいプロフィール
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免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載の株価・為替レート・PER・配当利回り・時価総額・手数料・税制・業績数値は2026年8月14日時点で確認した情報に基づく概算であり、変更される場合があります。株価は2026年8月13日終値、円換算はユーロ円183.9円で計算しています。PERおよび時価総額は算出方法により提供元ごとに数値が異なります。業績数値は各社の公表資料および報道に基づきます。税額の計算は概算であり、実際の課税関係は個々の状況により異なります。配当利回りは将来の配当を保証するものではありません。実際の取引条件および税務の取扱いは、各証券会社の公式サイトおよび税務専門家にご確認ください。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。当サイトは本記事の情報に基づく損失について一切の責任を負いません。

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