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この記事の結論
- 欧州株は売るときも買うときと同じ手数料がかかります。少しずつ売ると往復コストの負担率が跳ね上がります
- 配当を受け取り続ける戦略は、国ごとに源泉税の重さが違うため、出口の判断に直結します
- 「売る理由」は前提が崩れた・比率が崩れた・お金が要る・税金の都合の4つで考えると整理しやすい、というのが筆者の意見です
- 買収されて上場廃止になれば、自分で売り時を決められないまま「売った」状態になるケースも実在します
欧州株に限らず、投資の記事の多くは「何を買うか」で終わります。当サイトもこれまで、買い方や比較の記事が中心でした。しかし、買った株はいつか売ることになります。それなのに「いつ、どういう理由で売るか」を先に決めている個人投資家は、筆者の周りを見ても多くありません。
この記事で書きたい結論は一つです。売る理由を、買う前に決めておく。それだけです。ただ欧州株には、日本株や米国株にはない事情が2つあります。手数料が往復でかかることと、配当に国ごとの源泉税がかかることです。この2つを踏まえたうえで、売る理由の型と、自分では売り時を決められない現実のケースを整理します。
手数料は「往復2回」かかる|少しずつ売ると割に合わない
サクソバンク証券クラシックプランの最低手数料は、取引所ごとに決まっています。ロンドンは3.30ポンド、フランクフルト・パリは3.30ユーロ(パリは2.20ユーロ)、ミラノ・マドリード・スイスは5.50ユーロ相当です。ここで見落とされがちなのが、この最低手数料は買うときだけでなく、売るときにも同じようにかかるという点です。約定金額が小さいほど、手数料の負担率は跳ね上がります。
たとえば片道の最低手数料が約700円だったとして、約定金額ごとの負担率を計算するとこうなります。
| 約定金額 | 片道の手数料負担率 | 往復(売買セット)の負担率 |
|---|---|---|
| 3万円 | 約2.3% | 約4.7% |
| 5万円 | 約1.4% | 約2.8% |
| 10万円 | 約0.7% | 約1.4% |
| 30万円 | 約0.2% | 約0.5% |
3万円の約定では往復で約4.7%が手数料に消える計算になります。この往復コストを取り返せるだけの値上がりが見込めるかが、売買を判断する最低ラインになると思います。少額をこまめに売買するより、まとまった単位で持ち、売買の回数自体を減らす方が、欧州株では理にかなっています。
配当を受け取り続ける戦略は、国によって手取りが違う
「売らずに配当をもらい続ける」という選択肢も、出口戦略の一つです。ただし欧州株の配当には、国ごとに現地源泉税がかかり、その重さは国によってかなり違います。
| 国 | 現地源泉税(条約適用前) | 租税条約適用後 | 超過分の扱い |
|---|---|---|---|
| ドイツ | 26.375% | 15% | 差額11.375%はBZSt(ドイツ財務当局)へ直接還付請求。日本の外国税額控除の対象外 |
| スイス | 35% | 10% | 差額25%はESTV(スイス連邦税務局)へ還付請求 |
| フランス | 10% | 10% | 還付手続きは不要 |
ドイツとスイスは、条約で軽減された後の税率であっても現地でかなりの割合が源泉徴収され、さらに超過分は自分で還付請求しない限り戻ってきません。国ごとの源泉税の詳しい比較はこちらの記事にまとめています。「配当をもらい続ける」という選択は、どの国の株を持っているかによって実質的な手取りが変わる、という前提込みで考える必要があります。
加えて、株価が上がっても円高になれば円建ての評価額は目減りします。為替リスクの記事で書いたとおり、為替は損益に二重で効きます。手数料・源泉税・為替という3つのコストを、売る前にまとめて見ておくことが出口戦略の土台だと筆者は考えています。
「売る理由」の4つの型|株価の上下は理由として弱い
売る理由を先に決めておくと言っても、何を基準にすればいいのか。筆者は次の4つの型で考えると整理しやすいと思っています。
- 前提が崩れたから売る。買った理由そのものが消えたケースです。減配した、主力事業を売却した、買収されて上場廃止になる、などが当たります
- 比率が崩れたから売る。1銘柄や1セクターが大きくなりすぎた場合のリバランスです。値上がりした結果としての売却であり、失敗の売却ではありません
- お金が要るから売る。生活費や大きな支出のための現金化です。投資判断の失敗とは切り離して考えるべきものだと思います
- 税金・コストの都合で売る。含み損を確定して損益通算する、年をまたいで課税のタイミングを調整する、といった実務的な理由です
この4つに共通するのは、どれも「株価が上がったか下がったか」そのものを理由にしていない点です。「下がったから売る」「上がったから売る」は、それ単独では理由として弱いというのが筆者の意見です。下がった理由が前提の崩壊なら1に、上がった結果として比率が崩れたなら2に、それぞれ言い換えられるはずです。株価そのものではなく、株価が動いた背景を見る、という順番だと考えています。
自分で売り時を決められないケースもある|ロトルクの実例
ここまでは「自分で売る理由を決める」前提で書いてきましたが、そもそも自分で決められないまま売却が決まってしまうケースも実在します。当サイトで実際にあった例を書きます。
イギリスのバルブアクチュエータメーカー、ロトルクは2026年7月16日にABBから1株503ペンスでの買収提案を受け、取締役会が推奨しました。株主投票は2026年9月3日に予定され、完了は2027年上半期が見込まれています。当サイトはこの銘柄を「上場廃止が見込まれるため」記事化を見送りました。過去には、イタリアのメディオバンカも同様に上場廃止見込みで対象外にした経緯があります。
買収が成立すれば、株主は現金を受け取って強制的に「売った」状態になります。自分がいつ、いくらで売るかを選ぶ余地はありません。「売る理由を先に決めておく」ことは大切ですが、それでも決められないまま出口を迎える現実があることも、あわせて知っておいてよいと思います。
まとめ:売る理由は、買う前に言葉にしておく
- 欧州株の手数料は売るときも買うときと同額。少額の売買は往復コストの負担率が重くなる
- 配当を受け取り続ける戦略は、ドイツ・スイス・フランスで源泉税の重さが違うため、国ごとの手取りを見ておく
- 売る理由は前提が崩れた・比率が崩れた・お金が要る・税金の都合の4つで考える
- 「株価が上がった・下がった」はそれ単独では弱い理由だと思う
- 買収による上場廃止のように、自分で売り時を決められないケースもある
買う前に、いつ・どういう条件で売るかを一行だけでも書き留めておく。それだけで、値動きに振り回されて判断する場面はかなり減ると思います。
この記事の検証方法
- サクソバンク証券の取引所別の最低手数料は、公式手数料表から引用しています
- 手数料の負担率シミュレーションは、片道の最低手数料を約700円と仮定した概算計算であり、実際の金額・為替レートにより変動します
- ドイツ・スイス・フランスの配当源泉税率は、各国の租税条約および現地の情報にもとづいています
- ロトルクの買収に関する情報(提案日・買収価格・株主投票日・完了予定時期)は報道を出典としています
- 筆者はポルトガル在住で、インタラクティブ・ブローカーズ(IBKR)の口座から欧州株ETFを中心に保有しています(本記事の商品を保有しているとは限りません)
この記事を書いた人:Kawa
ヨーロッパ在住30代・サイドFIRE中の兼業投資家。日本の証券会社では買えない欧州株を、現地から実際の数字で解説しています。詳しいプロフィール
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免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。記載の手数料・税率・シミュレーションは本文記載の各時点で確認した情報にもとづく概算であり、実際の金額は取引条件により異なります。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。当サイトは本記事の情報に基づく損失について一切の責任を負いません。

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