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この記事の結論
- 今回実測した欧州の通信株は5社で、配当利回りの中央値は4.09%です(2026年9月3日時点)。5社しかないため、業種全体の傾向として断定はできません
- 高配当になりやすい理由は、契約者から毎月決まった料金が入り、売上が読める商売だからだと考えられます
- ただし設備投資が重く、配当性向の中央値は65%です。スイスコムは103%で、利益を超える金額を配当に回している状態です
- 同じ「通信」でも、セルネックスは基地局を貸すタワー会社、ブイグは建設が本業の複合企業で、商売の中身が違います
当サイトでは以前、欧州株の配当利回りを業種別に実測した記事で8つの業種を比べました。あの記事に通信は入っていません。理由は単純で、今回の実測対象である通信関連の銘柄が5社しかなく、ひとつの業種として並べるには数が少なすぎたからです。ただ、その5社だけを見ても配当利回りの中央値は4.09%あり、8業種の中でも高い部類に入る水準でした。数が少ない以上、業種の傾向として言い切ることはできませんが、なぜ高いのか、その高さにどんな裏があるのかは、5社の実測データからでも見えてくることがあります。この記事では、その中身を整理します。
先に断っておくと、この記事で扱うのはオレンジ・ブイグ・スイスコム・ドイツテレコム・セルネックスの5社です。当サイトが記事化している範囲に限った実測であり、欧州の通信業種全体を網羅したものではありません。この点を踏まえたうえで読み進めていただければと思います。
実測結果——5社の配当利回り中央値は4.09%
2026年9月3日時点で5社のPER・配当利回り・配当性向を取得すると、次のとおりでした。
| 会社 | 国 | 配当利回り | PER | 配当性向 | 事業 |
|---|---|---|---|---|---|
| オレンジ | フランス | 4.83% | 11.73倍 | 52% | 通信 |
| ブイグ | フランス | 4.50% | 13.58倍 | 65% | 建設・通信・メディア |
| スイスコム | スイス | 4.09% | 24.73倍 | 103% | 通信 |
| ドイツテレコム | ドイツ | 3.52% | 15.89倍 | 56% | 通信 |
| セルネックス | スペイン | 2.92% | — | — | 通信インフラ(タワー) |
5社の配当利回りは2.92%から4.83%まで並んでおり、中央値は4.09%です。業種別に実測した別記事で最も高かったのは保険の4.58%、次いで公益の4%台でしたので、通信の4.09%はそれらに近い、高配当の部類だと言えると思います。ただし5社という少ない数での中央値であることは、繰り返しになりますがお伝えしておきます。
なぜ通信は高配当になりやすいのか
通信会社の売上の多くは、契約者が毎月支払う通信料です。景気が良くても悪くても、スマートフォンやインターネット回線を解約する人は多くありません。この「毎月決まった料金が入ってくる」という構造は、電気・ガス・水道を扱う公益株に近い性格だと思います。売上が読みやすい商売は、配当も安定して出しやすい傾向があるというのが、当サイトで公益株を見たときと同じ見立てです。
実際、表のオレンジ・ドイツテレコムはいずれもPERが11〜16倍台で、配当性向も52〜56%と極端に高くはありません。安定した契約収入を背景に、利益の半分程度を配当に回している姿が見えます。
ただし設備投資が重い——配当性向65%とスイスコムの103%
ここがこの記事でいちばん伝えたい点です。通信は契約者数さえ維持できればよい商売ではありません。通信規格は数年ごとに更新され、そのたびに基地局や回線設備を入れ替える必要があります。公益株や保険株と同じく売上は読みやすいものの、稼いだ利益をそのまま配当に回せるかというと、事情が違います。設備投資という決まった出費が、毎年一定額かかり続けるからです。
その結果が、配当性向の中央値65%という数字です。業種別に実測した別記事では、8業種のうち配当性向が最も高かったのは銀行の67%でした。通信の65%はそれに次ぐ水準で、公益や保険ほど余裕を持って配当を出せているわけではないことがうかがえます。
なかでもスイスコムの配当性向は103%です。配当性向が100%を超える銘柄を実測した別記事でも触れているとおり、これは利益よりも多い金額を配当に回している状態を意味します。今の配当水準を維持し続けられるかどうかは今後の利益次第で、当サイトとして先行きを断定することはできませんが、少なくとも「利益に余裕を残して配っている」状態ではないという事実は、押さえておいたほうがよいと思います。
同じ「通信」でも中身が違う——タワー会社と複合企業
表の5社は、便宜上「通信株」としてまとめていますが、実際の商売はそれぞれ違います。まずセルネックスは通信会社ではありません。基地局を建てる鉄塔を保有し、それをオレンジやドイツテレコムのような通信会社に貸して賃料を得る、通信インフラ会社です。配当利回りは5社の中で最も低い2.92%で、PERと配当性向は当サイトの実測では取得できませんでした。取得できなかった理由については確認できていないため、ここでは推測を書きません。
もう一社、ブイグも「通信株」として見ると実態を見誤ります。ブイグは建設事業を本業とし、通信とメディアも手がける複合企業です。配当性向65%という数字も、通信事業だけでなく建設事業を含めた会社全体の利益から計算されたものです。同じ表に並んでいても、オレンジやドイツテレコムのような純粋な通信会社と、ブイグやセルネックスを同列に扱うのは適切ではないと思います。
国境を越えにくい商売
通信事業は、各国が発行する電波免許のうえに成り立っています。ある国で通信サービスを提供するには、その国の免許が必要で、他国の通信会社が自由に参入できるわけではありません。この構造は、公益株や、規制業種としての銀行・保険と近いものがあります。表の5社もフランス・スイス・ドイツ・スペインと国がばらけており、「その国で通信を使う人がいる限り、その国の通信会社に一定の需要が残る」という構造が、高い契約者維持率につながっているのではないかと考えています。
まとめ:毎月入るが、投資も要る商売
- 今回実測した通信株5社の配当利回り中央値は4.09%(2026年9月3日時点)。8業種の実測の中でも高い部類ですが、5社しかない点は踏まえておく必要があります
- 高配当の理由は、契約者から毎月決まった料金が入る売上の読みやすさだと考えられます
- ただし設備投資が重く、配当性向の中央値は65%。スイスコムは103%で利益を超えて配当に回しています
- セルネックスはタワー会社、ブイグは建設が本業の複合企業で、同じ「通信株」でも商売の中身は一様ではありません
高い利回りの裏には、必ずその商売の形があります。通信の場合は「毎月お金は入ってくるけれど、数年ごとに大きな設備投資が要る」という形だと思います。数字だけを見て高配当だと判断するのではなく、その配当がどんな商売から生まれているのかを、あわせて見ておいたほうがよいと思います。
この記事の検証方法
- PER・配当利回り・配当性向は、2026年9月3日時点で取得したものです
- 対象は今回実測した通信関連の5社(オレンジ・ブイグ・スイスコム・ドイツテレコム・セルネックス)のみです。欧州の通信業種全体を網羅した集計ではなく、5社という少ない数のため、業種全体の傾向として一般化はしていません
- セルネックスはPER・配当性向が取得できなかったため、表では「—」としています。取得できなかった理由については確認できていないため、推測は書いていません
- 各社の設備投資額・契約者数などは当サイトで確認していないため、この記事には書いていません
- 業種別の配当性向の中央値(65%、最も高いのは銀行の67%)は業種別に実測した別記事の集計によるもので、この記事単独の集計ではありません
- スイスコムの配当性向103%は現時点の実測値であり、今後の減配・増配を当サイトが予測するものではありません
- 筆者はポルトガル在住で、インタラクティブ・ブローカーズ(IBKR)の口座から欧州株ETFを中心に保有しています(本記事に登場する銘柄を保有しているとは限りません)
この記事を書いた人:Kawa
ヨーロッパ在住30代・サイドFIRE中の兼業投資家。日本の証券会社では買えない欧州株を、現地から実際の数字で解説しています。詳しいプロフィール
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免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。記載のPER・配当利回り・配当性向は2026年9月3日時点で取得した情報にもとづいており、市場の変動により変更される場合があります。対象は今回実測した5社に限ったものであり、欧州の通信業種全体を代表するものではありません。特定の銘柄が割安・割高であることや、将来の配当の増減を示すものでもありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。当サイトは本記事の情報に基づく損失について一切の責任を負いません。

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