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この記事の結論
- 無配の欧州株には、成長投資を優先している型・自社株買いで還元している型・再建の途中の型という違う理由があります
- 自社株買いは発行済株式数を減らすしくみで、株価を通じて「見えない配当」として働きます
- 日本の税制では配当は受け取るたびに課税されますが、値上がり益は売るまで課税されません。無配・自社株買い型には課税の繰り延べという構造があります
- ただし再建中の無配だけは注意が必要です。配当が無いうえに業績も苦しい場合があります
欧州株といえば高配当というイメージが定着しつつありますが、当サイトが継続して確認している銘柄の中には、配当を一切出さない企業も一定数あります。「無配」と聞くと業績が悪いのではと身構えたくなりますが、それは半分だけ正しく、半分は誤解です。
無配には理由の型があり、型によって意味がまったく違います。成長投資にお金を回している型、配当の代わりに自社株買いで株主に還元している型、そして業績の立て直しの途中で配当を出す余力がない型。同じ「無配」という言葉の中に、この3つがまとめて入っています。高配当株だけで組む戦略の注意点は別記事で扱っているので、今回はその逆側にある無配を掘り下げます。
この記事では、当サイトが個別銘柄の記事作成の過程で確認してきた無配の欧州企業を例に、その理由を型ごとに整理します。結論を先に言うと、配当の有無だけで会社の質を判断するのは早計だというのが筆者の意見です。ただし、型を混同すると痛い目を見るケースが一つだけあります。それが再建中の無配です。
理由①:成長投資を優先している
デンマークのNKT(高圧電力ケーブル)は無配です。同社は洋上風力発電の海底送電ケーブルなど需要が伸びている分野への設備投資を優先しており、稼いだ利益を配当ではなく成長投資に回す方針を取っています。同じくデンマークのITサービス企業ネットカンパニーや、ドイツのファッションEC大手ツァランドも無配です。いずれも事業が拡大局面にあり、利益を配当として社外に出すより、その資金で事業を伸ばすほうが合理的、という判断だと考えられます。
この型の無配は、赤字だから配当を出せないのではなく、黒字を配当以外に使うという経営判断です。デンマークの補聴器大手デマントも無配ですが、知名度や人気の高さと配当の有無は、必ずしも一致しません。
理由②:配当ではなく自社株買いで還元している
イギリスの住宅建設大手バークレー・グループは、配当を取りやめて自社株買いに切り替えました。デンマークのワクチンメーカー、バヴァリアン・ノルディックも配当は出さず、自社株買いのみで株主還元を行っています。
自社株買いは、企業が市場から自社の株式を買い戻して消却するしくみです。発行済株式数が減れば、残った株主1人あたりの取り分(1株あたり利益や資産)は相対的に増えます。配当のように現金が手元に入るわけではありませんが、株式の価値を通じて還元されるという意味で「見えない配当」と呼ばれることがあります。当サイトでも銘柄を確認するたびに発行済株式数の前年比を実測しており、減少している企業は珍しくありません。
また、日本の税制では配当は受け取るたびに課税されますが、値上がり益は売却するまで課税されません。自社株買いによる株価上昇は「含み益」の状態が続くため、配当を受け取り続けるより課税のタイミングを後ろに延ばせる構造があります。どちらが有利かは保有期間や売却のタイミング次第で変わるため一概には言えませんが、課税のタイミングそのものが違うという点は押さえておく価値があると思います。
型を見分ける3つのポイント
ここまでの型を整理すると、次の表のようになります。同じ「無配」でも、確認すべき数字が違うことがわかります。
| 型 | 意味 | 確認すべき数字 | 例 |
|---|---|---|---|
| 成長投資優先 | 黒字だが利益を投資に回している | 設備投資額・売上の伸び | NKT、ツァランド、ネットカンパニー |
| 自社株買い還元 | 配当の代わりに株式価値で還元 | 発行済株式数の前年比 | バークレー・グループ、バヴァリアン・ノルディック |
| 再建の途中 | 業績が苦しく配当を出す余力がない | 営業利益・有利子負債の推移 | エールフランスKLM、アルストム、サフィロ |
成長投資優先と自社株買い還元の2つは、黒字の使い道が配当以外に向いているだけで、会社の状態そのものは健全なケースが多いといえます。注意が必要なのは、この2つと再建の途中の型を混同してしまうことです。
再建中の無配だけは注意が必要
フランスの航空会社エールフランスKLM、同じくフランスの鉄道車両メーカー・アルストム、イタリアのメガネ大手サフィロは、いずれも無配です。ただしこの3社は、成長投資でも自社株買いでもなく、業績の立て直しの途中にあるという共通点があります。
再建の途中にある企業の無配は、配当が無いうえに業績も苦しいという状態が重なっている可能性があります。無配であること自体を「割安のサイン」や「そろそろ復配」といった材料にするのではなく、営業利益や有利子負債の推移など、立て直しの進み具合を示す数字を確認することが欠かせません。この記事ではどの企業が今後どうなるかを予想することはしませんが、型を混同しないことが実務上いちばん大事なポイントだと思います。
逆に言えば、無配だからといって一律に警戒する必要もありません。当サイトが銘柄を検討する際に見ている基準でも、配当の有無そのものは除外の理由にしていません。見るべきは配当の有無ではなく、その裏にある理由です。
まとめ:配当の有無ではなく、理由を見る
- 無配には「成長投資優先」「自社株買い還元」「再建の途中」という異なる理由がある
- 自社株買いは発行済株式数の減少を通じた「見えない配当」であり、配当とは課税のタイミングも異なる
- 再建の途中の無配だけは、業績の数字も合わせて確認する
- 「無配だから避ける」「配当があるから安心」という単純な判断は避けたい
配当の有無は、会社の質ではなく、お金の返し方の違いだと思います。ただし、再建の途中の無配だけは、その違いを一度確認してから判断したほうがよさそうです。
この記事の検証方法
- 各社の配当方針(無配か、自社株買いへの切り替えか)は、当サイトが個別銘柄の記事を作成する過程で確認した情報にもとづいています
- 自社株買いによる発行済株式数の増減は、当サイトが銘柄ごとに前年比で実測している数値です
- 日本の配当課税・譲渡益課税の取り扱いは、一般的な税制のしくみとして記載しています。個別の税務判断は税理士等にご確認ください
- 筆者はポルトガル在住で、インタラクティブ・ブローカーズ(IBKR)の口座から欧州株ETFを中心に保有しています(本記事に登場する企業を保有しているとは限りません)
この記事を書いた人:Kawa
ヨーロッパ在住30代・サイドFIRE中の兼業投資家。日本の証券会社では買えない欧州株を、現地から実際の数字で解説しています。詳しいプロフィール
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免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。記載の各社の配当方針・税制の取り扱いは本文記載の時点で確認した情報にもとづいており、変更される場合があります。個別の税務判断は税理士等の専門家にご確認ください。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。当サイトは本記事の情報に基づく損失について一切の責任を負いません。

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