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この記事の結論
- 防衛株を見るなら受注残高(オーダーブック)。売上高やPERだけでは状態が分かりません
- 実例はラインメタルの受注残730億ユーロ(過去最高)とキネティックの受注残48億ポンド(前年比40%以上増)
- ただし受注残高=将来の利益ではありません。生産能力や納期のタイムラグがあります
- 期待が先に株価に織り込まれ、当サイトがPERの高さを理由に記事化を見送った銘柄もあります
欧州各国の防衛費拡大を背景に、防衛関連株への関心が高まっています。当サイトでもラインメタル、BAEシステムズ、レオナルドなど複数の防衛・航空宇宙関連銘柄を個別に取り上げてきました。そのうち4社を横並びで比較する記事はすでに別に書いているので、この記事では一段手前の話をします。防衛株というジャンルを、そもそも何を見て読むかという話です。
結論を先に書きます。当サイトが防衛株を追うときに軸にしているのは、売上高やPERではなく「受注残高」という数字です。防衛装備は契約から納入までに数年かかることが一般的なので、今期の決算だけを見ても、その企業がこの先どれだけの仕事を抱えているかは分かりません。
防衛株を見るなら「受注残高」で
防衛装備の受注は、契約が成立してすぐに売上に計上されるわけではありません。戦車や砲弾、無人機システムといった装備は、契約から生産・納入までに数年かかるのが一般的です。そのため、ある企業の防衛需要の強さを測るには、今期の売上高よりも「受注残高(バックログ)」——契約は済んだが、まだ売上に計上されていない仕事の総量——を見るほうが実態に近いというのが当サイトの考え方です。
実際、当サイトが個別記事で確認した受注残高は次のとおりです。
キネティックは英国防省の試験場・訓練場の運営を主力事業のひとつとしており、日本の陸上自衛隊にも無人航空標的システムを供給しています。受注残高が前年から4割以上増えているのは、こうした需要の広がりを反映した数字です。ラインメタルの730億ユーロという受注残高は、同社にとって過去最高の水準にあります。どちらも、単年の売上高だけを見ていては気づきにくい「積み上がった仕事の量」を示しています。
ラインメタル、キネティックともに、SBI証券・楽天証券・マネックス証券では取り扱いがなく、購入にはサクソバンク証券などの選択肢が必要になります。
受注残高は「将来の利益」ではない
ただし、受注残高が増えることが、そのまま利益の増加を意味するわけではありません。契約を履行するには生産能力が必要です。工場のライン増強や人員確保が追いつかなければ、受注残高は積み上がる一方で、実際に売上へ計上されるペースは変わらないということが起こり得ます。さらに、契約から納入までの間に原材料費や人件費が上昇すれば、当初の想定より利益率が下がることもあります。
受注残高は「これから売上になる仕事の量」を示す数字であって、「これから増える利益」を示す数字ではありません。受注が売上になり、売上が利益になるまでの間には、生産能力と納期という現実のタイムラグがあることを前提に見る必要があります。
期待が先に株価へ入ることもある
受注残高のように公表済みの事実に基づく数字だけでなく、「期待」が先に株価へ織り込まれることもあります。ドイツのヘンソルトとレンクという2社について、当サイトは決算自体が黒字であるにもかかわらず、PERがそれぞれ86.19倍・47.18倍という水準にあることを理由に、記事化を見送った経緯があります。
業績が伸びていても、その伸びに対する期待がすでに株価へ織り込まれすぎている場合、当サイトでは無理に取り上げないという判断をしています。受注残高という公表された実績と、市場がすでに織り込んでいる期待は、別のものとして分けて見る必要があると考えています。
正直に触れておきたいこと
ここで、防衛株というジャンルについて、避けずに触れておきます。防衛関連株は、紛争や軍事的な衝突など、人が死傷する出来事が起きるたびに買われやすい資産です。数字だけを追いかけていると見えにくくなりますが、投資対象として選ぶ以上、この居心地の悪さは避けて通れません。当サイトはこれを正当化するつもりも、あおるつもりもありません。当サイトが書けるのは、各社が公表した受注残高という事実までです。今後の情勢がどうなるかという見通しは、この先も書きません。
なお、ESGの文脈では、防衛関連企業が投資対象から除外されてきた経緯があるとされます。近年はこの扱いを見直す議論があるとも言われますが、その詳細を当サイトで一次資料まで確認できているわけではないため、「議論がある」という段階の紹介にとどめます。
まとめ:数字は乾いたまま見る
- 防衛株を見るなら受注残高。売上高やPERだけでは状態が分からない
- ただし受注残高=将来の利益ではない。生産能力・納期・コストのタイムラグがある
- 期待がすでに株価へ織り込まれている銘柄もある(当サイトが見送った実例)
- ESGとの関係は議論があるという段階にとどめておく
この分野は、数字より先に感情が動きやすいと感じています。だからこそ、受注残という乾いた数字で見るようにしています。
この記事の検証方法
- ラインメタル・キネティックの受注残高は、各社の公式IR資料をもとにした当サイトの個別記事での実測値を引用しています
- ヘンソルト・レンクのPERは、両社の記事化を見送った時点で当サイトが確認した値です
- 本記事は特定銘柄の売買を推奨するものではなく、受注残高という指標の読み方を整理したものです
- 筆者はポルトガル在住で、インタラクティブ・ブローカーズ(IBKR)の口座から欧州株ETFを中心に保有しています(本記事の銘柄を保有しているとは限りません)
この記事を書いた人:Kawa
ヨーロッパ在住30代・サイドFIRE中の兼業投資家。日本の証券会社では買えない欧州株を、現地から実際の数字で解説しています。詳しいプロフィール
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免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。記載の受注残高・PERは各社の公式IR資料または当サイトの個別記事における確認時点の情報に基づく概算であり、変更される場合があります。実際の投資判断や取引条件は、各企業の最新の公式資料および証券会社の公式サイトで必ずご確認ください。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。当サイトは本記事の情報に基づく損失について一切の責任を負いません。

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