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この記事の結論
- 不動産株のPERには保有物件の評価益が混ざることがあり、他業種のPERと同じ意味では読めません
- 見分け方は単純です。PERが異常に低いのに配当性向も低いなら、利益に現金でないものが混ざっている可能性を疑います
- 当サイトが実際に見送った独LEGイモビリエン(PER3.27倍・配当性向9.64%)など5つの実例で説明します
- 「不動産関連」でも、物件を持つ会社と持たない会社(英ライトムーブ)では、この問題の有無が変わります
欧州株を1銘柄ずつ検討していると、「PERが極端に低いのに、なぜこの銘柄を記事にしないのか」と思う場面に出会います。とくに不動産セクターです。PERが3倍台、5倍台という数字だけを見れば「割安」に映りますが、当サイトはこうした銘柄を何度も見送ってきました。
理由は、不動産株のPERが他業種と同じ意味を持たないことがあるからです。この記事では、当サイトが実際に検討して見送った5つの実例をもとに、不動産株のPERがなぜ当てにならないことがあるのか、そしてPERの代わりに何を見ればいいのかを整理します。先に結論を言うと、原因は保有物件の評価益です。現金の裏付けがない利益が、PERを不自然に押し下げることがあります。
PERが低いのに配当性向も低い——LEGイモビリエンの実例
実例が、独の住宅賃貸大手LEGイモビリエンです。当サイトが検討した時点のPERは3.27倍と極端に低く、一見すると絶好の割安株に見えました。ところが同じ時点の配当性向は9.64%にとどまっていました。稼いだ利益をほとんど配当に回していないのに、PERだけが低い。この組み合わせは不自然です。
調べると、保有物件の時価評価による評価益で純利益がかさ上げされていたことが確認できました。物件の値上がり分を利益として計上できる一方、その利益には現金の裏付けがありません。だから配当には回せず、配当性向は低いまま。それでもPER(株価÷1株あたり利益)の分母である利益だけは大きくなるので、PERは不自然に低く見えます。当サイトはこの銘柄を、数字の理由を説明しきれないとして見送りました。
評価益とは何か:利益は増えても、配当の原資にはならない
不動産会社の多くは、保有する物件を取得原価ではなく時価で評価する会計処理を採っています。物件の推定価値が前期より上がれば、その値上がり分を評価益として損益計算書の利益に計上できます。逆に値下がりすれば評価損として利益を押し下げます。
ここで大事なのは、評価益は帳簿上の利益であって、現金が入ってきたわけではないという点です。物件を売却して初めて現金化されるもので、保有を続けている限りは絵に描いた利益にすぎません。にもかかわらずPERの計算式ではほかの利益とまったく同じ扱いを受けるため、評価益の比率が大きい期ほどPERは実態より低く出ます。製造業や小売業のPERを見る感覚で不動産株のPERを読むと、この点で足をすくわれます。
見分け方:当サイトが見送った5つの実例
LEGイモビリエンのほかにも、当サイトは似た理由で不動産株を見送っています。当サイトが各銘柄を検討した時点の実測値をまとめました。
| 銘柄 | 国 | PER | 配当性向 | 当サイトの判断 |
|---|---|---|---|---|
| LEGイモビリエン | 独 | 3.27倍 | 9.64% | 評価益による見かけの低PERとして見送り |
| 3iグループ | 英 | 5.37倍 | ― | 評価益による見かけの低PERとして見送り |
| コロニアル | 西 | 10.44倍 | 6.20% | PERと配当性向の矛盾で見送り |
| メルリン・プロパティーズ | 西 | 9.56倍(予想25.37倍) | ― | 実績PERと予想PERの乖離で見送り |
| セグロ | 英 | ― | 140.6% | 配当性向の高さで見送り |
コロニアルはPER10.44倍と極端な低さではありませんが、配当性向6.20%という組み合わせがLEGイモビリエンと同じパターンでした。メルリン・プロパティーズは、実績PER9.56倍に対して予想PERが25.37倍まで跳ね上がっており、直近の利益に一時的な押し上げ要因が入っていて翌期以降は剥落する可能性を示していました。セグロは逆に配当性向が140.6%と高すぎ、稼いだ利益以上を配当に回している状態でした。
5例に共通する見分け方はこうです。PERが異常に低いのに配当性向も低いなら、利益に現金でないものが混ざっている可能性を疑う。これが当サイトが実際に使っている判定です。ここで見送った銘柄をダメな会社と書くつもりはありません。当サイトが記事にしない条件をまとめた記事でも触れていますが、あくまで当サイトが数字の理由を説明しきれなかった、というだけです。
代替指標:NAV・配当性向・キャッシュフロー・金利
PERが当てにならないなら、不動産株では何を見ればいいのでしょうか。一般論として、次の3つが代わりの手がかりになります。
- NAV(純資産価値)に対する株価。不動産株は「純資産のいくらで買えるか」で見るのが一般的とされ、PBR(株価純資産倍率)に近い考え方です
- 配当性向とキャッシュフロー。評価益は配当の原資になりません。配当を支え続けられるかは、賃料収入など現金を伴う利益で見る必要があります
- 借入コスト=金利。不動産会社の多くは借入で物件を取得する事業構造のため、金利上昇の影響を最も直接的に受けるセクターのひとつです
いずれも当サイトのPERランキングのような単純な一覧化はできず、決算資料を1社ずつ確認する手間がかかります。それでも、割安・割高の見た目に飛びつく前に、決算の読み方をまとめた記事を使って利益の中身を確認する価値はあると思います。金利と不動産株の関係は、欧州の政策金利をまとめた記事ともつながっています。
「不動産関連」でも別物:物件を持たないライトムーブとの対比
ここまでの評価益の問題は、物件を保有する会社に固有のものです。同じ「不動産関連」というくくりでも、物件を持たない会社にはこの問題自体が起きません。
英ライトムーブはイギリス最大級の不動産情報サイトを運営する会社ですが、自社で物件を保有しているわけではありません。不動産会社や仲介業者から掲載料や広告料を受け取るビジネスモデルで、収益は現金の裏付けを持つ手数料収入が中心です。保有物件の評価益で利益がかさ上げされる、という構造自体が存在しません。
一方、当サイトが個別記事にしている独フォノビア(住宅賃貸)や仏クレピエール(商業用不動産)は、実際に物件を保有して賃料収入を得る会社です。同じ「不動産関連」という言葉でくくっても、物件を持つ会社と持たない会社では、PERの読み方そのものが変わります。「不動産株」という一言で銘柄をまとめて評価しようとすると、この違いを見落としやすくなります。
まとめ:PERが低い不動産株ほど、配当性向を並べて見る
- 不動産株のPERには保有物件の評価益が混ざることがあり、他業種のPERと同じ意味では読めません
- 見分け方は、PERが異常に低いのに配当性向も低いなら、利益に現金でないものが混ざっている可能性を疑うことです
- PERの代わりに、NAVに対する株価・配当性向とキャッシュフロー・金利の影響を見ます
- 物件を保有する会社と、物件を保有しない会社(ライトムーブなど)では、この問題の有無が変わります
- 当サイトが不動産株を何度も見送ってきたのは、この業種が悪いからではなく、数字の意味を読み違えやすいからです
不動産株のPERを見て「安い」と感じたときほど、配当性向も並べて確認してみてください。両方が低いなら、それは割安のサインではなく、利益の中身を確かめるべきサインかもしれません。
この記事の検証方法
- 本文で挙げたPER・配当性向は、いずれも当サイトが各銘柄を検討した時点の実測値です。現在の数値とは異なる場合があります
- 実測値の取得にはstockanalysisなどの無料株価データサイトを使用しています
- NAVや各社の物件価値そのものについては、当サイトで実測していないため本文中の具体的な数値は記載していません
- 筆者はポルトガル在住で、インタラクティブ・ブローカーズ(IBKR)の口座から欧州株ETFを中心に保有しています(本記事で挙げた銘柄を保有・検討しているとは限りません)
この記事を書いた人:Kawa
ヨーロッパ在住30代・サイドFIRE中の兼業投資家。日本の証券会社では買えない欧州株を、現地から実際の数字で解説しています。詳しいプロフィール
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免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。本文中の数値は、当サイトが各銘柄を検討した時点の実測値であり、現在の数値とは異なる場合があります。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。当サイトは本記事の情報に基づく損失について一切の責任を負いません。

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