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この記事の結論
- 表面利回りの並び順と、税引き後の手取りの並び順は一致しません。同じ表面5%でも、フランス株とスイス株では税引き後に1ポイント近い差がつきます
- 高配当株だけで組むと、金融・公益・たばこといった業種に偏ります。分散のつもりが集中になりかねません
- 利回りが高いときは、その配当が減配前の実績か、特別配当を含んでいないかを確かめる必要があります(当サイトが実際に見た3つの実例で解説)
- 筆者の意見としては、中心はインデックスに置き、高配当は現金の流れを作る部分として一部に留めるのが現実的だと思います
「配当利回りの高い株を集めれば、配当だけで生活できるのでは」。欧州株を調べていると、日本株や米国株よりも利回りの高い銘柄に出会う機会が多く、そう考えたくなる気持ちはよく分かります。実際、当サイトで扱っている銘柄の中にも表面利回り5%を超えるものは珍しくありません。
ただ、高配当株だけでポートフォリオを組むという戦略には、賛成できる部分と、正直に言って気になる部分の両方があります。この記事では、当サイトが実際に計算した数字と、実際に見た配当の中身をもとに、その両面を書きます。結論から言うと、高配当株を持つこと自体には意味があると思いますが、それだけで組むのはおすすめしません。理由を順に説明します。
高配当株だけで組むと、業種はどれくらい偏るのか
当サイトで実測した利回り上位の銘柄を業種別に見ると、はっきりした傾向があります。上位に集まりやすいのはたばこ、銀行、保険、公益(ガス・電力・送電網)、不動産賃貸、小売といった業種です。逆に、成長性の高いテクノロジー株やヘルスケア株が高配当ランキングの上位に入ることはほとんどありません。
これは偶然ではないと思います。配当利回りが高くなるのは、①株価が伸びずに配当だけが積み上がっているか、②事業の性質上、大きな設備投資や研究開発を必要とせず、利益をそのまま配当に回せるかのどちらかだからです。銀行・保険・公益は後者の典型で、成長よりも安定した現金収入を配る業種に高配当が偏る構造になっています。
ここに落とし穴があります。「高配当株を10銘柄に分散したから安心」と思っていても、その10銘柄が金融・公益・たばこに寄っていれば、業種としては集中しているのと変わりません。金利や規制、原油価格といった同じ要因で、10銘柄がまとめて動く可能性があります。分散のつもりが、業種の集中になっていないか。銘柄数ではなく業種の内訳で確認する必要があると思います。
表面利回りの並び順と、税引き後の並び順は一致しない
もう一つ、高配当株だけで組む戦略を検討するうえで見落とされがちなのが税金です。欧州株の配当には、まず現地の源泉税がかかり、そのあとに日本側の20.315%がかかります。かかる順番のせいで、表面利回りの高さで国を並べても、手取りの並び順は同じにならないのです。
当サイトの計算式(表面利回り ×(1−現地源泉税率)×(1−0.20315))で、表面利回り5.00%だった場合の税引き後の目安を国別にまとめました。
| 国 | 現地源泉税 | 表面5.00%の税引き後 | 備考 |
|---|---|---|---|
| フランス | 10% | 約3.59% | 日仏租税条約の限度税率10%。欧州では有利な部類 |
| ドイツ | 26.375% | 約2.93% | 条約限度15%を超える11.375%分は日本の外国税額控除の対象外。ドイツ税務当局(BZSt)へ直接請求が必要 |
| スペイン | 19%(保守的に想定) | 約3.23% | 日西租税条約(2021年発効)の限度税率は5%とされるが、適用は証券会社の手続き次第 |
| スイス | 35% | 約2.59% | 条約限度10%を超える25%分はスイス税務当局(ESTV)へ請求 |
| イタリア | 最大26%とされる | 断定しない | 条約適用なら15%とされるが、適用は証券会社の手続き次第で当サイト未確認 |
| イギリス | 原則なしとされる | 断定しない | 当サイトで一次資料による確認が取れていない |
| デンマーク | 当サイト未確認 | 断定しない | 一次資料による確認が取れていない |
同じ表面5%でも、フランス株(約3.59%)とスイス株(約2.59%)では、税引き後に1ポイント近い差がつきます。「利回りが高い順」に銘柄を並べたランキングをそのまま信じると、実際の手取りでは順位が入れ替わっているということが起こります。より詳しい国別の比較は配当税の国別比較記事でも扱っていますが、ここで伝えたいのは「表面利回りだけで組む戦略は、税金という一段目のフィルターを通していない」ということです。
なお、イタリア・イギリス・デンマークの3か国は、条約の適用が証券会社の手続き次第で変わる部分や、当サイトで一次資料の確認が取れていない部分があるため、この記事では具体的な税率を書いていません。この3か国の株を検討する際は、購入前に証券会社に実際の源泉徴収率を確認することをおすすめします。
利回りが高いときほど、中身を確かめる
表面利回りが極端に高い銘柄を見つけたとき、当サイトが毎回やっているのは「その配当がいつの実績で、通常配当か特別配当か」を確かめる作業です。これを飛ばすと、実態とかけ離れた利回りをそのまま信じてしまいます。当サイトで実際に見た3つの例を挙げます。
- テイラー・ウィンピー(英・住宅建設)は表面利回りが約9.66%でしたが、これは減配前の配当に基づく数字でした。中間配当が4.67ペンスから1.20ペンスへ約74%減額されたと報じられており、当サイトでは記事の全セクションにこの減配の事実を併記しました
- ダネルム(英・家庭用品小売)は直近1年の配当0.700ポンドのうち0.250ポンドが特別配当で、通常配当だけなら0.450ポンド(利回り約5.04%)でした
- ラショナル(独)は権利落ちの配当20.00ユーロのうち、通常配当は16.00ユーロで、残る4.00ユーロは特別配当でした
この3つに共通するのは、「表面利回りが高い」という一つの数字だけを見ていたら、実態を見誤っていたという点です。減配前の配当をもとにした利回りは、次の配当が同額である保証がありません。特別配当を含んだ利回りは、その特別配当が翌年も出るとは限りません。高配当株だけで組む戦略を取るなら、この確認作業を銘柄ごとに続ける手間が発生する、ということは知っておいたほうがいいと思います。
配当は年に何回入るのか
米国株の感覚で「高配当株を集めれば毎月配当が入る」と考えている場合、欧州株では少し事情が違います。当サイトで掲載銘柄の権利落ち履歴を実測したところ、年1回配当が119社、年2回が54社、年3回が22社、年4回が6社という結果でした。年1回が多数派です。
取引所別に年間の平均支払回数を見ても、ドイツ1.00回・スイス1.00回と、この2市場はほぼ年1回に集中しています。フランス1.46回、イタリア1.40回、デンマーク1.64回、スペイン2.15回で、最も回数が多いイギリスでも2.35回にとどまります。
つまり、「毎月配当が入る」形は欧州株だけでは作りにくいということです。国や銘柄をまたいで組み合わせれば入金のタイミングを分散できますが、それでも米国株のように四半期配当が基本という市場ではありません。入金は年に数回、しかも春に偏りやすいという前提で考える必要があると思います。
まとめ:中心はインデックス、高配当は現金の流れを作る一部に
- 高配当株だけで組むと、金融・公益・たばこといった業種に偏ります。銘柄数ではなく業種の内訳で分散を確認する
- 表面利回りの並び順と、税引き後の手取りの並び順は一致しません。同じ表面5%でも、国によって税引き後に1ポイント近い差がつきます
- イタリア・イギリス・デンマークは、税率の断定を避け、購入前に証券会社へ確認する
- 表面利回りが高いときは、その配当が減配前の実績か、特別配当を含んでいないかを確かめる
- 「毎月配当」の形は欧州株だけでは作りにくい。入金は年に数回、春に偏る前提で考える
それでも高配当株に意味があるとすれば、それは「現金が実際に手元に入ってくる」ことだと思います。値上がりを待って売却の判断をしなくても、配当という形で定期的にお金が入ってくるのは、精神的な負担を減らしてくれます。ただ、それを主戦力にするのは、ここまで書いた偏りと手間を引き受ける覚悟が要ります。筆者自身は、中心はインデックスに置き、高配当株は現金の流れを作る部分として一部に留めるのが現実的だと思います。
この記事の検証方法
- 国別の税引き後利回りは、当サイトの計算式(表面利回り ×(1−現地源泉税率)×(1−0.20315)を用いたモデルケースであり、各国の租税条約の限度税率をもとにしています。イタリア・イギリス・デンマークは一次資料による確認が取れていないため、具体的な税率を記載していません
- 配当の支払回数(年1回119社・年2回54社・年3回22社・年4回6社、取引所別平均回数)は、当サイトが掲載銘柄の権利落ち履歴を実測した結果です(2026年8月28日時点)
- テイラー・ウィンピー、ダネルム、ラショナルの配当の内訳は、各社の決算発表・配当情報および報道をもとに当サイトが個別記事で確認した内容です
- 高配当の業種傾向は、当サイトが実測した利回り上位銘柄の業種分類にもとづく傾向であり、統計的な網羅調査ではありません
- 筆者はポルトガル在住で、インタラクティブ・ブローカーズ(IBKR)の口座から欧州株ETFを中心に保有しています(本記事で挙げた個別銘柄を保有しているとは限りません)
この記事を書いた人:Kawa
ヨーロッパ在住30代・サイドFIRE中の兼業投資家。日本の証券会社では買えない欧州株を、現地から実際の数字で解説しています。詳しいプロフィール
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免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。記載の税率・利回り・配当実績は本文記載の各時点で確認した情報にもとづく試算であり、実際の税額は証券会社の手続きや個別の状況によって異なります。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。当サイトは本記事の情報に基づく損失について一切の責任を負いません。

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