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この記事の結論
- VGKのような米国上場の欧州ETFは、分配金にたどり着くまでに見えない層を含めて3回税金が引かれます
- ①ファンドの中で欧州各国が源泉徴収する分は、個人としては取り戻せないのが一般的とされます
- 取り戻せる可能性があるのは②米国の10%だけで、確定申告と外国税額控除が必要、しかも限度額があります
- NISA口座でも③日本の20.315%が消えるだけで、②の米国10%は引かれたままです
当サイトでは、経費率の低さや流動性の高さからVGKなど米国上場の欧州ETFを選択肢のひとつとして紹介してきました。ただし、分配金にかかる税金の仕組みについては、正直にまだ書けていませんでした。
結論から言うと、VGKの分配金は3段階で税金が引かれます。しかもそのうち1段階は、ファンドの中で完結してしまうため、証券会社の取引報告書を見ても存在に気づきにくい層です。この記事では、この「見えない層」を含めた三層構造を整理したうえで、確定申告でどこまで取り戻せるのか、NISA口座では何が変わるのかを、国税庁の資料をもとに解説します。
本記事は一般的な制度の説明であり、個別の税務アドバイスではありません。実際の申告にあたっては、必ず税務署または税理士にご確認ください。
分配金は「見えない層」を含めて3回、税金が引かれる
VGKのような米国上場ETFがヨーロッパの株式を保有している場合、分配金が投資家の手元に届くまでに、次の3段階で税金が引かれます。
| 層 | どこで引かれるか | 税率の目安 | 個人として取り戻せるか |
|---|---|---|---|
| 第1層 | ファンドが欧州各国の株から配当を受け取る時点 | 国によって異なる | 取り戻せないのが一般的とされる |
| 第2層 | ETFの分配金に対する米国の源泉税 | 日米租税条約により10% | 確定申告で一部〜全部を控除できる可能性 |
| 第3層 | 残額に対する日本の課税 | 20.315% | ―(NISAなら非課税) |
第1層は、ETFが保有する欧州各国の株式の配当に対して、各国がファンドに対して源泉税を課すものです。ファンドの基準価額や分配金は、この税金が引かれた後の金額をもとに計算されるため、投資家の目には最初から見えません。そしてこの部分は、個人投資家の外国税額控除の対象にならないのが一般的とされています。ファンドという別の主体が納めた税金だからです。
第2層は、ETFの分配金そのものに対して米国が課す源泉税です。日米租税条約により、日本居住者は原則30%の税率が10%に軽減されるとされています。国内の証券会社を通じて保有していれば、この軽減を受けるための手続きは証券会社側で処理されるとされ、投資家が個別に何かを申請する必要はありません。第3層は、残った金額に対する日本の課税で、所得税15.315%と住民税5%を合わせた20.315%です。
数字で見たほうが実感しやすいので、分配金100ドルの単純化した例で計算してみます。
| 段階 | 計算 | 残る金額 |
|---|---|---|
| 分配金 | ― | 100.00ドル |
| 第2層(米国10%) | 100 × 10% | 90.00ドル |
| 第3層(日本20.315%) | 90 × 20.315% | 約71.72ドル(手取り) |
手取りは約71.7ドルですが、これはあくまで第2層と第3層だけを機械的に計算した単純化した例です。実際の税率は保有銘柄の国籍構成や租税条約の適用状況によって変わりますし、第1層はこの計算に入る前にすでに引かれています。確定申告をすれば、このうち第2層の10ドルの一部〜全部が戻ってくる可能性があります。
それでも、経費率0.06%という低さと、SBI証券などの国内ネット証券でも購入できる手軽さを考えると、三層構造を知ったうえで使うぶんには、良い道具だと思います。知らずに使うのと、知ったうえで使うのとでは、確定申告をするかどうかの判断も変わってきます。
ちなみに、日本の主要ネット証券では取り扱いのない欧州の個別株を日本語で買えるサクソバンク証券でも、配当を受け取れば同様に現地の源泉税と日本の課税が発生します(この場合はファンドを介さないため層の数え方は変わります)。個別株の配当課税についてはこちらの記事で別途整理しています。
取り戻せるのは第2層だけ――外国税額控除には限度額がある
国税庁は外国税額控除について、次のように説明しています。
居住者は、所得の生じた場所が国内であるか、国外であるかを問わずすべての所得について日本で課税されますが、国外で生じた所得について外国の法令で所得税に相当する租税の課税対象とされる場合、日本及びその外国の双方で二重に所得税が課税されることになります。この国際的な二重課税を調整するために、一定額を所得税等の額から差し引くことができます。
国税庁タックスアンサー No.1240「居住者に係る外国税額控除」
ここで対象になるのは、あくまで第2層の米国源泉税です。第1層はファンドが納めた税金であり、投資家個人が確定申告で取り戻せる対象には含まれないとされています。控除できる金額にも上限があり、次の式で計算される控除限度額を超える分は戻りません。
控除限度額 = その年の所得税額 ×(国外所得総額 ÷ 所得総額)
つまり、国外からの所得が所得全体に占める割合が小さい人ほど、控除できる枠は小さくなります。払った米国の税金が全額戻るとは限りません。使い切れなかった分は、一定の要件のもとで翌年以降に繰り越せる制度もありますが、細かい要件は国税庁のページで確認するのが確実です(出典:国税庁タックスアンサー No.1240)。
NISA口座の注意点――日本の税は消えても、米国の10%は残る
NISA口座で保有すれば、税金の問題は解決すると考えている方もいるかもしれません。ここは誤解しやすいので、独立の見出しで整理します。
NISA口座でVGKを保有した場合、たしかに第3層の日本の20.315%は非課税になります。ここまでは事実です。しかし、第2層の米国10%は、NISA口座であっても引かれたままです。NISAの非課税措置は日本の課税を対象にしたものであり、米国の源泉税には及びません。
さらに、外国税額控除は「日本で課税された所得税額」を前提にした制度です。NISA口座は日本側の税金がそもそも発生しないため、外国税額控除の仕組みも使えないとされています。つまり、NISA口座では第2層の10%を取り戻す手段そのものがなくなる、という見方ができます。
「NISAなら分配金は無税」ではなく、「NISAでも米国の10%は残る」というのが正確な理解です。特定口座であれば確定申告で第2層の一部〜全部を取り戻せる可能性がある一方、日本の20.315%はそのままかかります。NISAは第3層が消える代わりに第2層を取り戻す手段を失う、という交換関係にあり、どちらが有利かは所得水準や国外所得の割合によって人ごとに変わるため、一概には言えません。
国内籍の投資信託とは何が違うのか
「投資信託の配当課税なら、確定申告なんてしたことがない」という方も多いはずです。それには理由があります。国内で設定された公募投資信託には、2020年1月分配金から二重課税調整措置が導入され、ファンド内で発生した外国税相当額が自動的に調整される仕組みが整ったとされています。投資家が確定申告をしなくても、この調整はファンド側の計算に組み込まれます。
一方、VGKのような米国籍のETFには、この自動調整の仕組みがありません。第2層の米国源泉税を取り戻したいのであれば、投資家自身が確定申告で外国税額控除を申請する必要があります。何もしなければ、第2層は引かれたまま戻ってきません。「米国ETFは自動で調整されないので、取り戻すなら自分で動く必要がある」という点が、国内籍の投資信託との一番の違いです。
まとめ:構造を知ったうえで、口座と申告を選ぶ
- VGKなど米国上場の欧州ETFの分配金は、見えない第1層+米国10%+日本20.315%の三層で税金が引かれます
- 個人として取り戻せる可能性があるのは第2層の米国10%だけで、確定申告と外国税額控除が必要、しかも限度額があります
- NISA口座でも米国の10%は残り、外国税額控除も使えないとされています
- 国内籍の投資信託は2020年以降ファンド側で自動調整されますが、米国籍ETFにはその仕組みがなく、取り戻すなら自分で確定申告が必要です
- それでも、経費率の低さと買いやすさを考えれば、構造を知ったうえで使うぶんには良い道具だと思います
特定口座で確定申告をするか、NISAで日本分の非課税だけを受け取るか。正解はひとつではなく、所得水準や国外所得の割合によって変わります。具体的な税額については、税務署または税理士にご確認ください。
この記事の検証方法
- 外国税額控除の制度と控除限度額の計算式は、国税庁タックスアンサー No.1240(2026年8月29日確認)を出典としています
- 米国の源泉税率10%は日米租税条約にもとづく軽減税率として一般に説明されているものです
- 日本の課税20.315%(所得税15.315%+住民税5%)は上場株式等の配当に対する現行の税率です
- 国内籍投資信託の二重課税調整措置(2020年1月分配金から)は、日本証券業協会・日本取引所グループ等の公表資料にもとづいています
- 本記事の税率・計算例は一般的な制度の説明であり、個別の税額を保証するものではありません
この記事を書いた人:Kawa
ヨーロッパ在住30代・サイドFIRE中の兼業投資家。日本の証券会社では買えない欧州株を、現地から実際の数字で解説しています。詳しいプロフィール
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本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の税務・投資判断を推奨するものではありません。記載の税率・制度は本文記載の時点で確認した情報にもとづいており、税制改正等により変更される場合があります。個別の税額の計算・申告については、必ず税務署または税理士にご確認ください。当サイトは本記事の情報に基づく損失について一切の責任を負いません。

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