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スペイン編:再エネと金融で伸びる情熱の国

スペイン編:再エネと金融で伸びる情熱の国

ヨーロッパ投資といえば、ドイツやフランスが真っ先に思い浮かぶかもしれません。
しかし今、“再エネと金融”という2本の柱で静かに成長を遂げている国があります。それがスペインです。

イベルドローラをはじめとした再生可能エネルギー企業、そして世界的に展開するメガバンクのサンタンデール。地味に見えるこの国は、欧州の次なる成長市場として注目され始めています

この記事では、そんな「情熱の国」スペインを、投資先として徹底分析。注目銘柄から投資戦略、リスクまで、中級者以上の個人投資家に向けて、実践的な情報をお届けします。


目次

スペインは「ヨーロッパ投資」の穴場なのか?

なぜ今、スペイン株が注目されているのか

近年、スペイン株への注目度がじわじわと高まってきています。

その理由の一つは、再生可能エネルギーと金融セクターの強さにあります。スペインは国策として再生可能エネルギーを強力に推進しており、風力・太陽光発電の導入率はヨーロッパでもトップクラス。また、世界展開しているメガバンクも複数存在し、安定的な収益を上げている企業が多いのです。

スペインのエネルギー・気候政策:PNIEC(ピーニーイーシー)

スペイン政府は「国家エネルギー・気候計画(PNIEC:Plan Nacional Integrado de Energía y Clima)」を掲げ、再エネシフトを加速させています。

主な目標(2021〜2030):
・2030年までに電力の74%を再生可能エネルギーに
・最終エネルギー消費の42%を再エネで賄う
・再エネ発電容量を現在の約2倍に増強(約160GW)
・温室効果ガスを1990年比で23%削減

このPNIECは、EUのグリーンディール(2050年カーボンニュートラル)と完全に連動しており、EUからの補助金・ファンドを活用して国内インフラ・企業への投資を進めています。

加えて、スペイン市場全体が割安に放置されている傾向があり、いわば“欧州のバリュー株市場”と呼べる存在。成長ポテンシャルを秘めたこの国は、分散投資や中長期投資に最適な穴場として再評価されています。


成長の柱は「再生可能エネルギー」と「グローバル金融

スペイン株の最大の魅力は、明確な成長ドライバーが2つ存在していることです。

ひとつ目は「再生可能エネルギー」。スペインを代表する企業イベルドローラ(Iberdrola)は、風力・太陽光などを中心に世界中で発電事業を展開しており、EUのグリーンディール政策とも強く連動しています。ESG投資の観点からも非常に注目されている銘柄です。

※このチャートは招待リンク付きで表示しています

もうひとつは「グローバル金融」。サンタンデール銀行BBVAといったスペインの大手銀行は、国内市場だけでなくラテンアメリカや米国にも展開しており、世界経済の回復とともに収益が拡大しています。特に金利上昇局面では、銀行株にとって追い風が吹きやすいタイミングでもあります。

※このチャートは招待リンク付きで表示しています

この2大セクターを軸に、スペイン市場は中長期的な成長が期待されているのです。


他国と比べたスペインの立ち位置(ドイツ編フランス編との比較)

ヨーロッパ株の中で、スペインはしばしば「地味な国」と評されます。事実、ドイツ編(自動車・医薬・化学の王道セクター)や、フランス編(ラグジュアリー×高配当)と比べると、注目度はやや低めかもしれません。

しかしこの“地味さ”こそが投資家にとってはチャンスです。競合が少なく、割安で放置されている優良企業が多い。さらに、再エネや金融といったセクターは、他国の主要セクターと相関が低く、分散投資において有効です。

また、スペインは高配当銘柄も多く、インカムゲイン狙いの投資家にとっても魅力的。ヨーロッパ株投資のポートフォリオにおける“バランサー”的な存在として活用するのが理想です。


再エネ大国スペインのポテンシャル

イベルドローラに代表される再エネ企業の強み

スペインの再エネ分野を語るうえで、まず外せないのがイベルドローラ(Iberdrola)の存在です。イベルドローラは世界40カ国以上で発電事業を展開し、風力発電の分野ではヨーロッパ最大級のプレイヤーです。再生可能エネルギー専業ではなく、送配電・小売も手がける総合エネルギー企業として、安定収益と成長性を両立しています。

同社はスペイン国内にとどまらず、米国やブラジルでも積極投資を行う“グローバル再エネ企業”としての地位を確立。ESGスコアも高く、サステナビリティ重視のポートフォリオに組み込むべき銘柄として、欧米の機関投資家にも評価されています。

ESGスコア:企業がどれだけ環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)に配慮した経営をしているかを数値で評価したもの。
投資家はこのスコアを見て、環境リスクや不祥事リスクの少ない企業を選ぶ参考にします。高いスコア=長期的に安定して成長しやすいとされ、ESG投資ファンドの組み入れ基準にも使われます。
(MSCI ESG Rating : https://www.msci.com/sustainable-investing/esg-ratings

再エネ分野での技術力と実績、政策との親和性、そしてグローバル展開。これらを兼ね備えたイベルドローラは、スペイン株投資の中核として非常に有力です。


EUのグリーンディールとスペインの役割

スペインが「再エネ大国」と呼ばれる背景には、EUのグリーンディール政策との強力な連動があります。

グリーンディールとは、2050年までにEU全体でカーボンニュートラルを実現するための大規模政策であり、再生可能エネルギーや電化、インフラ整備への巨額の投資を伴うものです。スペイン政府はこの流れを積極的に取り入れ、国家レベルでの再エネ推進政策を打ち出しています

中でも注目すべきは、太陽光・風力の導入拡大、スマートグリッドの整備、グリーン水素の実証事業など、民間企業だけでなく国主導のプロジェクトも多い点です。イベルドローラをはじめとする大手企業は、この政策と高い親和性を持ち、EU資金の恩恵を受けながら成長を加速させています。

👉 欧州グリーンディールとは?
こちらの記事では、EU政策全体と投資チャンスをより詳しく解説しています。


ESG投資として見たスペイン企業の魅力

近年、日本でも注目が高まるESG投資の視点から見ても、スペインは無視できない存在です。

特に再エネ・インフラ・電力・水処理といった分野で、スペイン企業はESG評価の高いビジネスモデルを構築しています。イベルドローラやレッド・エレクトリカ(電力送電会社)などは、温室効果ガスの削減・持続可能なインフラ投資・透明なガバナンスで高スコアを獲得しています。

また、スペイン企業は欧州のESG基準に対応した報告体制が整っており、国際的なESGファンドにも組み込まれやすいのが特徴です。ESG投資家としては、こうした企業を早期に発見し、ポートフォリオのサステナビリティを強化することが可能です。

👉 ヨーロッパESG投資とは?
ヨーロッパ全体のESG動向や注目テーマは、こちらの記事をご参考に。


金融で攻めるスペイン株

欧州銀行株投資の中でのスペインの位置づけ

ヨーロッパにおける銀行株投資といえば、一般的にはドイツのドイツ銀行やフランスのBNPパリバなどが挙げられますが、スペイン勢は“攻めの金融株”として独自のポジションを築いています。

サンタンデールやBBVAの特徴は、欧州内の低成長を脱し、新興国への攻勢で利益を稼ぐスタイルです。これは伝統的な欧州金融機関と一線を画しており、高リスク・高リターンを許容できる中上級者向けのポートフォリオに適した存在です。

また、スペインの銀行株はPER・PBRともに割安水準で取引されているケースが多く、「欧州銀行株の中でもコスパが高い」と評価されています。

👉 ヨーロッパ株の具体的な投資戦略
銀行株を含めたセクター別戦略の詳細は、こちらの記事でも解説しています。


インカム投資(高配当株)としての妙味

スペインの金融株は、安定的な高配当を提供するインカム投資先としても非常に魅力的です。

例えば、サンタンデール銀行は5〜6%前後の配当利回りが期待できる年も多く、配当目的で保有する投資家から根強い支持を集めています。欧州の銀行株全体が配当を重視する傾向にある中で、スペインの金融株は特に高い水準を維持しているのが特徴です。

また、配当性向にも柔軟性があり、業績回復とともに増配が期待できる点も、中長期ホルダーにとっては大きな魅力です。

👉 フランス編:ラグジュアリー×安定配当の二刀流投資
同じく高配当をテーマとしたフランス株との比較も、ぜひご覧ください。


スペイン株投資のはじめ方と買い方

日本から投資する方法(おすすめ証券口座

スペイン株への投資を始めるには、まず取引できる証券口座の選定が必要です。残念ながら、日本国内の主要ネット証券(楽天証券やSBI証券など)では、個別のスペイン株を直接購入できるサービスは限定的です。

そのため、スペイン株を取引するには、欧州株に対応した証券口座を開設することが不可欠です。特におすすめなのが、サクソバンク証券です。
サクソバンクは、IBEX35の構成銘柄を含む多くのスペイン企業に投資できるプラットフォームを提供しており、取扱銘柄の豊富さと取引ツールの充実度で群を抜いています。

👉 ヨーロッパ株投資におすすめの証券口座
詳しい比較・口座開設方法はこちらの記事で解説しています。


ETF(例:EWP)やインデックスで手軽に分散投資

「個別株にこだわらず、スペイン全体に分散投資したい」──そんな投資家におすすめなのが、スペイン株ETFの活用です。

代表的なのは、iShares MSCI Spain ETF(EWP)です。これは、スペインの主要企業を対象に構成されたETFで、イベルドローラやサンタンデール銀行などを一括で保有することができます。米国市場で上場しているため、日本の証券口座からも比較的簡単に購入可能です。

ETFの魅力は、低コストで広く分散された投資ができる点。個別株に比べてリスク分散が図れるため、初心者や中長期での運用を考えている人に向いています。

※このチャートは招待リンク付きで表示しています

スペイン株のリスクとチャンス

地政学的リスク(カタルーニャ独立問題など)

スペイン株に投資する際に注意すべきポイントのひとつが、地域に根差した政治リスクです。
特に代表的なのが、カタルーニャ地方の独立運動。バルセロナを州都とするこの自治州では、過去に独立を問う住民投票や抗議運動が激化し、政治の不安定要因として株式市場にも影響を与えてきました。

このような地政学的リスクは、外国人投資家の資金流入にブレーキをかける要因にもなり得ます。一方で、国内全体の安定性やEU加盟国という立場が支えとなり、瞬間的な混乱に対する回復力があるのもスペイン市場の特徴です。

👉 地政学を武器に変える!ヨーロッパ投資の新常識
投資戦略に地政学リスクをどう活かすかは、こちらの記事で解説しています。


不動産バブルと外国人排除の動きに要注意

近年、スペインでは不動産価格の高騰が社会問題化しています。とくにマドリードやバルセロナといった都市部では、家賃や物件価格が急騰し、地元住民の生活を圧迫するレベルに達しているのが現状です。

この背景には、外国人投資家や移住者による物件購入の増加があります。特にEU圏外の投資家が現地不動産を買い進める動きに対し、政府・自治体が課税強化や制限措置を検討中で、「外国人が物件を買う場合、最大100%の税金をかける案」も浮上しています。
BBC NEWS : スペイン、非EU居住者の不動産購入に100%の課税を検討 住宅不足対策で

こうした動きは、金融機関の融資や不動産関連株式に影響を及ぼす可能性があり、投資家にとっては見逃せないリスクです。さらに、外国資本排除の姿勢が強まることで、株式市場のグローバル性にも悪影響を及ぼす懸念があります。

スペイン株を中長期で保有するなら、こうした国全体の投資受け入れ方針の変化にも目を配るべきです。


スペイン株はこんな人におすすめ

高配当・ESG銘柄を中長期で持ちたい人

スペイン株は、高配当銘柄とESG銘柄の両立が可能な投資先です。
例えば、サンタンデール銀行のような高配当株は、年5%前後の配当利回りを提供することもあり、インカムゲインを重視する投資家にとって魅力的です。加えて、イベルドローラなどの再生可能エネルギー企業は、ESG投資の代表格とも言える存在で、将来的な成長も期待できます。

つまり、持続可能性+利回りの両方をバランスよく狙える市場がスペインです。安定志向かつ中長期でじっくり資産形成を目指す人には、まさに理想的な投資対象です。

分散投資を広げたい人

ヨーロッパ株に投資する場合、どうしてもドイツやフランスに偏りがちです。実際、多くの欧州ETFでもこの2国の比重が大きくなっています。

その点、スペイン株は他国と違うセクター構成(再エネ、グローバル金融、観光など)を持っており、ポートフォリオの分散に最適です。とくに、相関性の低い市場に資産を分散したい中級者以上の投資家には、スペインは“次に加えるべき一手”となります。

スペイン株を組み込むことで、地政学・業種・通貨の3つのリスク分散が実現でき、長期的な資産の安定化にもつながります。

欧州の経済格差をチャンスと見る投資家

ヨーロッパでは、ドイツや北欧諸国のような“先進国グループ”と、スペイン・ポルトガル・ギリシャなどの“周辺国グループ”との間に経済格差が存在します。

しかし、こうした格差を**「出遅れ国の成長余地」と捉える視点**を持つ投資家にとって、スペインは絶好の投資対象となります。EUの財政支援やグリーン投資政策の恩恵を受けやすく、いわば“欧州の新興市場”のような位置づけでもあるのです。

👉 “経済格差”がチャンス!欧州株で今買うべき国とは?
格差をチャンスとする投資視点について、こちらの記事で詳しく解説しています。


まとめ|スペインは「情熱」だけじゃない、実力派の成長市場

再エネと金融で支える経済の安定感

「情熱の国」というイメージが先行しがちなスペインですが、投資の視点で見ると、確かな実力を持った成長市場であることが分かります。

「再エネ×金融」という2つの柱に支えられたスペイン経済は、他の欧州諸国と差別化された成長ドライバーを持っていることが魅力です。さらに、高配当銘柄やESG銘柄としても優れた選択肢が多く、中長期の分散投資に適した“堅実な市場”と言えるでしょう。

スペイン株は、情熱だけじゃない――確かな成長と安定性を備えた、今こそ注目すべき実力派の欧州市場です。
ヨーロッパ投資の地図を広げながら、あなただけのポートフォリオを描いていきましょう。

Kawa
サイドFIRE生活中
ヨーロッパ在住30代。兼業投資家として株式投資、FX、不動産投資を行う。株式投資やFX取引では、ダウ理論とグランビルの法則を用いたテクニカル分析メインで、ファンダメンタルズ分析も組み合わせて投資判断を行う。欧州の不動産市場にも注力し、賃貸収入やキャピタルゲインを狙った長期的な投資を狙う。夢はボルゾイを飼うこと。
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